コラム石垣 2021年11月1日号 宇津井輝史

1961年にソ連のガガーリン飛行士がボストーク1号で人類初の有人宇宙飛行に成功してから60年。宇宙へ向けた人類最初の目標は月だった。

▼1968年に米国のアポロ8号が月の周回軌道を回り、翌年にはアポロ11号が月面着陸に成功した。最初の一歩を印したアームストロング船長が発した「人としては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍」という言葉は、宇宙空間を新たなフロンティアとする宣言になった。

▼2011年に退役した米国のスペースシャトル計画が民間に引き継がれ、国家事業だった宇宙への挑戦は企業のフロンティアになった。効率化、低コスト化が期待され、宇宙は身近になった。

▼日本でも多くの企業が宇宙ビジネスに参入し、ロケットや人工衛星の小型軽量化などをめざすベンチャー企業も次々と名乗りを上げている。米国では宇宙旅行の商業化がすでに一部実現し、火星に居住できる基地建設のシミュレーションも現実味を帯びる。宇宙での資源開発、製造業の移転など大きな可能性が膨らむ。

▼無限の可能性を牽引するのは人類が到達したテクノロジーである。だが同時に人類によるイノベーションは20世紀末から一段と速度を増し、新たなフェーズに入った。科学と技術の融合が私たちの生活や労働を一変させ、一方で生命と細胞のメカニズムが解明されて遺伝子を操作することさえ可能になっている。

▼未知への挑戦はヒトの特性だが、私たちはいま「人間とは何か」という重い問いと向き合っている。自動学習する人工知能(AI)が人間を機械に置き換え、ゲノム編集技術が「超人」さえ生み出そうとする。果たして人類はどこへ行こうとしているのか。新たな世界観が必要な時代である。

(コラムニスト・宇津井輝史)

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