コラム石垣 2021年10月21日号 神田玲子

100代目の総理に選出された岸田首相。「分断から協調へ」を旗印に掲げてスタートした。早速、全閣僚に対し、国民の声を丁寧に聞くための車座対話を実施するよう指示を出した。車座といえば、海外にも先例がある。米国のオバマ元大統領が、在任中から続けているマイノリティの青年への支援活動だ。

▼そのときはまだ高校生だった青年たちに、8年ぶりに再会した模様をCNNが放映した。オバマ氏自身が父親のいない家庭で育った境遇について青年たちと車座になって話しながら、一人前になることは、自分だけではなく周りの世界に対しても責任を負うことだと語り掛けていた。自分の経験を青年たちと共有することで、大統領と高校生という社会的立場の違いを飛び越え、対等に意見を交わすことができる。オバマ氏が自分と同じ境遇で育ったことを知った青年の一人は、今では一児の父親として家族ために生きていこうと確信を持つに至る。

▼日本ではお花見や社員旅行のときなどに車座になって座ることが多い。座が興ずるにつれて上下の関係なく、誰もが肩肘張らずに本音で話すことが許される形でもある。オバマ氏は、自分の生い立ちを同じ境遇にある高校生と分かち合うことで互いの距離を近付けることができた。

▼岸田政権は、国民との距離をどのような形で狭めていくのか。たとえ円形になったとしても、一方が聞き役で、他方が訴える側に徹していては両者の距離は縮まらないだろう。両者の精神的な隔たりを埋めるには、ここ数年の間に日本が何を経験したのかを腹を割って話し、共通の認識を醸成することが必要だ。岸田政権が掲げる「協調」の実現につなげるための精神的な車座を期待したい。

(NIRA総合研究開発機構理事・神田玲子)

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