コラム石垣 2021年11月11日号 丁野朗

新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が解除されて以来、世の中の動きがにわかに加速した。ありがたいことだが、年度単位の国・自治体の業務などは一気に再開し、正直、対応に苦慮している方々も少なくないだろう。地域の仕事が多い筆者も同様である。

▼その地域は、コロナ禍で多くの困難に直面した。だが、次の活動に向けて準備を重ねてきた地域とそうでない地域では、大きな格差が生まれそうだ。

▼この間、地域の仕事を通じて強く感じたことがある。それは、自地域の歴史や資源への認識の違いである。地域は、長い歴史の中で数々の盛衰を重ねてきた。主産業の衰退や、天災による壊滅的打撃などである。しかし、その都度、危機を乗り越え今日につながっている。従って、自らの歴史を認識し、次を構想できる地域は、このコロナ禍にあっても絶えず未来を見据えていたのではないか。

▼歴史を重視する地域の強みとは何か。それは地域が築いてきた数々の社会資本の強みでもある。その中には、地域が輝いた時代、先人たちが行った産業や都市インフラへの投資、人と技に磨きをかけ、流通や産業ネットワークを築いて繁栄してきた歴史である。いわば地域の「歴史的投資」とでもいえよう。

▼小樽運河が長い論争の末に運河埋め立てを回避し、その歴史を生かした新しい経済を生み出した事例などはその典型であろう。

▼「歴史を失った民は滅びる」(アーノルド・J・トインビー)の言葉を待つまでもなく、地域は常に、自らの置かれた歴史的優位性を磨いて発展してきた。

▼先行き不透明な時代は今に始まったことではない。地域の未来のヒントは常に歴史の中にある。誠に「振り返れば未来」である。 (日本観光振興協会総合研究所顧問・丁野 朗)

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