わが国経済の好循環を実現するためには、「下請等中小企業」の取引条件を改善することが重要です。本コーナーでは、全国に設置され、電話やメール、ウェブサイトにより無料で相談できる「下請かけこみ寺」(本部:公益財団法人全国中小企業振興機関協会)に寄せられた「親事業者の4つの義務と11の禁止行為」に関する問い合わせの中から、参考になる事例をQ&A形式で解説します。
購入・利用強制の禁止
Q.工作機械メーカーのA社(資本金:3億円)は、取引のあるB社(資本金:1000万円)に、A社が自ら指定するリース会社から工作機械をリースをするよう取引の担当部長を通じて要請しました。B社は既に同等の性能の工作機械を購入し保有していることから、いったんはリース契約の要請を断ったものの、その後も再三担当部長から要請があったため、今後の取引への影響を考え、リース契約を結びました。
このような行為は、問題にならないのでしょうか。
A.下請法上、購入・利用強制の禁止になると思われます。利用強制の対象は、親事業者が指定するリース、保険などのサ―ビスの利用が該当します。
下請事業者が購入・利用する意思がないと表明したにもかかわらず、またはその表明がなくても明らかに購入・利用する意思がないと認められるにもかかわらず、重ねて親事業者が指定する物品・サービスの購入・利用を要請することは、購入・利用強制に該当する恐れがある行為です。
ポイント
例えば、親事業者が自ら指定するリース会社から工作機械のリース契約を締結するよう下請事業者に要請したところ、下請事業者は既に同等の性能の工作機械を保有していることから、リース契約の要請を断ったにもかかわらず、再三要請され、リース契約を締結させられたという違反行為の事例があります。
親事業者に下請法の該当部分を示しながら、十分に協議し双方で納得することが肝要です。
不当な経済上の利益の提供要請とは
Q.A社(資本金:5億円)は精密機械部品の製造を委託しているB社(資本金:3000万円)に対して、量産が終了している部品の金型を生産終了後も長期間無償で保管させています(金型の所有権はA社にあります)。B社としては、保管やメンテナンスに要する費用が重くのしかかって困っているのですが、どのように対応すればよいでしょうか。
A.親事業者が下請事業者に対して、自己のために金銭などの経済上の利益を提供させることにより、下請事業者の利益を不当に害することは、下請法上の「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」の規定に該当します。
本件の場合、A社が製造の委託が終了した部品の金型を下請事業者に無償で保管させ続けることは、保管という役務の提供要請であり、B社に特段のメリットもないことから、その利益を不当に害していると考えられ、下請法に違反する恐れがありますので、A社に対し、金型を引き取るか保管料を支払うよう協議するとよいと思われます。
ポイント
下請法上の「不当な経済上の利益の提供要請」とは、下請事業者に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることにより、下請事業者の利益を不当に害することです。
疑義が生じた場合には、十分に協議し、双方で納得することが肝要です。また、協議内容を書面化しておくことも大切です。
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