「下町育ちの再建王」の経営指南 小事を大事にし、小事に気付く人になる

視察ツアーで『クレートアンドバレル(Crate&Barrel)』という米国のキッチン用品やインテリアを取り扱う人気店に行った際、同社では、「細部が大事」という社員教育を徹底していました。例えば、部屋の隅が汚れていると、それを見たお客さまは「ここは汚い」と判断する。だから細部まで気を緩めてはいけない、という教育です。

これと同じで、私は「人を見るには小事を持って見る」ようにしています。相手の人柄や信頼性を知るには、本人の言葉ではなく、小さな行動や発言で測るほうが正しいのです。

例えば、名刺の出し方。大人なら正しい名刺の渡し方を心得ているはずなのに、ある経済学者は人差し指と中指で名刺を挟んで私に差し出しました。その人がどれだけ優れた人でも、これはダメです。一つのパーツとしては値打ちがあるかもしれませんが、組織では重用できません。

私はローコスト経営が基本だと考えていますが、ある会社の社長宅に招待され、お手洗いをお借りしたところ、前に使った誰かが電気をつけっ放しにしていました。社員にローコストを徹底させようとしたなら、自分が率先してやらないと結果は出ません。トイレの電灯は、その象徴であり、社長の小事として、これはダメなのです。ましてや、エコの時代の今、もっと広い視野で地球のために無駄はしない、と考える立場なのですから。コンサルタントとして、誰も同席しない二人きりの所で、社長にそのことの重要性を説きました。

また私は常々、ツキを呼ばない人とは付き合いたくないと思っています。ツキを呼ぶためには、「約束を守る」「嘘をつかない」「愚痴を言わない」は、最低条件です。

上司から仕事を頼まれたとき、「こんなの、できっこないじゃん」と愚痴を言う人がいたとします。上司は「彼ならできるだろう」と思って任せる。信頼の証しです。それを愚痴るとしたら、信頼されたくないと言っているようなもので、愚痴ることで自分自身を否定しているのと同じです。愚痴は小事ですが、その人の生きる姿勢が出るわけです。

「文章中の誤字」「人の名前や肩書を間違える」「手紙に貼る切手のゆがみ」……小事はたくさんあります。こういう小事に気を留める人がいる以上、小事軽視は許されません。

小事のほとんどは習慣、つまり教育で身に付くものです。今の時代、それを家庭や学校教育に求められない時代なので、ぜひ社内で小事の大事さを教えてください。

ビジネスではいつどのようなチャンスに出合うか分かりません。将来の大事のために、「小事を大事にし、小事に気付く人」が大切なのです。

小山 政彦(こやま・まさひこ) 株式会社 風土 代表取締役会長 (前 船井総合研究所 代表取締役会長) 1947年、東京生まれ。開成高校卒。早稲田大学理工学部数学科卒業後、実家のディスカウントストア経営に携わる。84年、船井総合研究所に入社。6年後には売り上げ3億円のNo.1コンサルタントになる。2000年の社長就任後は大証2部から東証1部上場、離職率20%台を6%までに改善、賞与支給No.1企業など経営者としても手腕を振るう。10年には代表取締役会長に就任。13年3月をもって退任し、現在は㈱風土代表取締役会長を務める。著書に『ベタ惚れさせるマネージメント』(講談社)、『9割の会社は人材育成で決まる!』(中経出版)など多数

お問い合わせ先

社名:株式会社 風土

TEL:03-5423-2323

担当:髙橋

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