社会的弱者の「住む」という生活基盤の確保をサポートする
株式会社マリア 代表取締役 佐藤 博子(さとう・ひろこ)
住居を探すことに苦労しない社会へ
私は65歳で不動産業を起業しましたが、その7年前に不動産会社に入社し、当初は主に一般の賃貸仲介を行っていました。その業務の中で、いわゆる障がい者と呼ばれる人々を支援するきっかけとなったのは、近隣に精神科クリニックが開業したことでした。
そのクリニックの患者さんはとても明るく、仕事もスポーツも前向きに楽しそうに取り組んでいました。クリニックの先生によると「良くなった患者さん自身だけでなく、親、家族も本人の自活を希望している」「患者さんが一般のアパートなどで生活し始めると、治療効果が高まる」というものでした。その先生は、地域との共存が大切という考えの下、患者さんと一緒に地域の行事に積極的に参加し、定期的に地域懇親会を開くなど、啓蒙(けいもう)活動に努めていました。
当時、理解のあるアパートのオーナーは少なく、患者さんが入居できる物件を紹介することは簡単ではありませんでした。そして、私は物件などを斡旋(あっせん)していく中で、世間一般では、精神科の患者だけでなく、独身女性やシングルマザー、高齢者などいわゆる社会的弱者層もアパート入居条件などが厳しく、住居探しに苦労していることが実感として分かりました。人生は、いつ何が起きるか分かりません。誰でも年を取りますし、病気や困難な状況になる可能性があります。どんな状況に陥っても、偏見や無理解が無く、多様性を尊重する社会であれば、住居探しに苦労することはないでしょう。私はそのような社会づくりに不動産業として少しでも貢献したいと思ったのです。
不動産業で地域に貢献
当社では、60歳以上の一人暮らしの高齢者や軽度の精神障がい者などに対するアパートなど賃貸物件の斡旋・仲介、投資家やオーナーなどを対象とした当該賃貸物件などの斡旋・管理・仲介を行っています。また、単身女性が高齢になったときの住居の確保についての相談や安価な物件の紹介および融資の斡旋も行います。
不動産投資としては、入居者が待っている状態なので空室率も少なく、事業としても魅力があります。ただ、社会一般に浸透している偏見や無理解があるので、丁寧に状況を説明し、理解していただけるオーナーを増やすよう心掛けています。個別対応を基本とし、入居希望者との面談では、できるだけ個人の希望に沿った物件を紹介するのが信条です。軽度の精神障がい者については、メンタルクリニックとの連携と訪問看護ステーション・障がい者就労支援事業所などを活用してさまざまな問題に対処しています。
今後の事業展開としては、約2年の間に首都圏に自社物件アパートなどの取得を計画しています。また、新たな医療機関との連携なども検討中です。コロナ禍がどのくらい続くのか不透明ではありますが、安心して暮らせる住環境づくりで地域に貢献したいと考えています。
会社データ
社名:株式会社マリア
所在地:千葉県松戸市新松戸1-252-1 パティオスクエアA-101
電話:047-393-8077
創業:2014年
事業概要:不動産売買・賃貸仲介、不動産管理、不動産コンサルティング
【松戸商工会議所】
※月刊石垣2021年11月号に掲載された記事です。
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