現代アートの面白さを、垣根を取り払い、たくさんの人に届けたい
カナカワニシアートオフィス合同会社 代表社員 河西 香奈(かわにし・かな)
アート業界の入り口を開放的で入りやすく
造形や行為によって未踏の表現を深耕し、新たな世界の視座を提示するアーティストたちの仕事の結晶である現代アート作品は、知的好奇心を刺激し続ける唯一無二のものです。しかし彼らを包括するアート業界は閉鎖的で、「よく分からないもの」としてくくられてしまったり、ギャラリーも「足を踏み入れがたい場」と思われてしまったりしがちです。
目の前にある才能が、世の中とつながっていないのはもったいない。この垣根を取り払い、面白がられるのを待っている作品を、世界中の業界内外の人々に届けたい。これが創業に至った強い動機であり、創業以降の7年間で増強され続けてきた経営理念です。
当社が運営する東京の清澄白河にある本店(アートギャラリー)は、認可保育園のはす向かいに位置する路面店で、ガラス張りの外観と大きな開口部を生かし、業界内外の方々を広くお迎えしています。老若男女問わず、ギャラリーに立ち寄った人には「丁寧に作品の説明をすること」を全スタッフが徹底しています。
夕方、保育園のお迎えの時間帯には、まるでギャラリーが保育施設になったように、アートを楽しむ親子でいっぱいになることもあります。
「アートの力」が人の意識を動かす
昨年のコロナ禍初頭、追加融資面談のため、金融機関の担当者の男性と一年ぶりに再会しました。彼いわく、一年前にギャラリーに来たとき、私に「分からなければ、分からないままでいいし、面白いと感じられたら、そのまま素直に面白がればいい」と言われた言葉がとても響いたそうです。それ以来、苦手意識や肩の力が抜けてアート自体に興味が湧き、ほかのギャラリーにも行って作品購入も検討し始めているとのことでした。
追加融資の相談時、新店舗の改装に伴い額面上の数字は落ちていました。しかし「地域からギャラリーを消してはいけない」と強い使命感を感じていただき、追加融資が実現しました。他業種の人に「アートの力」が響いたことが、何よりもうれしく感じました。
また、創業時から育ててきたアーティスト・安瀬英雄さんの作品が、「PHOTO LONDON(フォト・ロンドン)」というアートフェアに出展したことをきっかけに、大英博物館の学芸員の目に留まりました。その後、「縄文時代から現代まで」をテーマに大英博物館・日本館で企画された常設展のラストに、安瀬さんの作品が「現在の日本」を象徴する作品として公開されると、「コンセプトに感銘を受けた」と米国在住の人から新規購入の相談をいただきました。まさに当社の理念が結実した瞬間でした。
今後も地域の人たちに面白がってもらえるように、そして世界中の美術館に収蔵いただけるように、全力でまい進してまいります。
会社データ
社名:カナカワニシアートオフィス合同会社
所在地:東京都江東区白河4-7-6
電話:03-5843-9128
創業:2014年
事業概要:アートギャラリー経営、アート関連書籍編集・卸・出版、アート関連通訳・翻訳など
HP:https://www.kanakawanishi.com/
※月刊石垣2021年10月号に掲載された記事です。
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