大賞
神戸商工会議所(兵庫県)
有馬-六甲 Virtual Ride Race
主な取り組み
神戸商工会議所は、地元観光団体、企業と連携し、神戸の自然資源を活用したスポーツツーリズムの振興に取り組んでおり、コロナ禍で観光客が減少する中で、有馬温泉とヒルクライムコースとして人気の高い六甲山をつなぐバーチャルサイクリングイベントを開催。バーチャルを活用し、将来の誘客に向けて海外のサイクリストなど、新たな顧客層へのアプローチを行った点が高く評価された。
1.バーチャルを活用してコロナ禍をチャンスへ
・長引くコロナの影響により、さまざまなイベントが中止となり、インバウンドを含めた観光客が減少する中、神戸商工会議所では、有馬温泉観光協会や地元企業と連携し、インドアサイクリングアプリ「ROUVY(ルービー)」を利用したアジア初のバーチャルサイクリングイベント「有馬-六甲Virtual Ride Race」を2020年7月と21年7月に開催。
・ROUVY内に実際の「有馬温泉~六甲山頂」のヒルクライムコースをAR化(実在する風景にバーチャルの視覚画像を重ねて表示)し、レースを実施。世界中からオンラインでサイクリストが参加した。
・イベント開催以降、年間で全世界から1400人を超える利用者が同コースに挑戦しており、新たな顧客層へのアプローチにもつながっている。
2.神戸の自然資源を活用したスポーツツーリズムの振興
・神戸は海と山に囲まれた自然豊かな都市。その自然資源を最大限活用したスポーツツーリズム推進を目指し、19年から六甲山を舞台に体験ハイキングイベントなどの実証事業を展開。今回のイベントを含む実証事業を通して、六甲山のスポーツ活用の可能性の高さが示された。
・これまで有馬温泉には、サイクリストの拠点整備が伴っておらず、滞在につながらないケースが散見された。イベント開催をきっかけに、21年4月に高セキュリティーの駐輪場やカフェを備えるサイクリスト向け施設「CASA CICLISMO(カーザ・シクリズモ)」をオープンするなど拠点整備が進んだ。六甲山のヒルクライム後に有馬温泉で汗を流すなど、サイクリストにとって、滞在に適した魅力あるエリアとして認識されつつある。
3.地元観光団体、企業との連携・協働
・商工会議所、地元観光団体、企業が連携した実行委員会形式で事業を推進。イベント運営、映像配信、音響など、各社の得意分野を生かし、地域一体となって取り組んでいる。
優秀賞
糸魚川商工会議所(新潟県)
国石「ヒスイ」を柱とした『石のまち糸魚川』のシティプロモーション
主な取り組み
糸魚川商工会議所は、「世界最古のヒスイ文化発祥の地」といわれる地元のヒスイを活用した糸魚川ブランドの確立に取り組んでおり、古事記に残る「神話」を結び付けた商品の企画・販売などを実施。結婚35周年を祝う「翡翠婚式」に着目した旅行商品造成や装飾品、化粧品などの特産品開発による誘客で成果を上げていることなどが評価された。
1.ヒスイを生かした新たな旅行商品の造成
・結婚35周年に当たる「翡翠婚式」に着目し、新たな旅行商品「翡翠婚の旅」を企画し2020年12月にモニターツアーを実施。夫婦の手紙交換などで、これまでの夫婦の歴史を振り返る旅を提案している。記念品として幸福や繁栄の象徴と珍重されるヒスイ(糸魚川産)の箸置きなどを贈呈した。
2.特産品開発で新たな魅力の掘り起こし
・12年度から「ヒスイネイル」、「ヒスイカクテル」など、美容業、飲食店・宿泊施設などで提供できるサービスや新商品開発に取り組み、幅広い事業者のプロジェクト参画につなげている。
・16年度からは、古事記に残る出雲大社の主祭神「大国主命(おおくにぬしのみこと)」とヒスイをつかさどっていたとされる糸魚川の「奴奈川姫(ぬながわひめ)」との日本最古のラブロマンスをコンセプトに「むすびいと」ブランドを設立。装飾品・化粧品・食品など13事業所が30品目に上る商品を開発・販売。異業種の商品を組み合わせたギフトボックスの販売を行うなど事業者主体の自走化の取り組みを推進している。
3.アフターコロナに向けた海外需要の取り込み
・11年より、国内外から多数の来場があるヒスイ・鉱物・化石の展示販売会「糸魚川翡翠ミネラルフェア」などさまざまな事業を実施。ヒスイへの評価が高い中華圏を中心に、インバウンドの誘客・需要獲得につなげていく。
岐阜商工会議所(岐阜県)
長良川ブランド「かわべの宵(ゆうべ)」「かわべの時間」
主な取り組み
岐阜商工会議所では、市と連携し地域の文化や産業などを「長良川ブランド」としてブランディングし、地域資源や体験観光を推進。1300年を超える歴史を持ち、国の重要無形文化財に指定されている「ぎふ長良川鵜飼」を川岸から観覧するイベント「かわべの宵」や水辺空間の新しい活用の可能性を探るワークショップ「かわべの時間」を開催するなど、「長良川」を核とした地域活性化の取り組みが評価された。
1.コロナ禍にも対応したイベントの提案
・2020年10月に実施した、長良川鵜飼を川岸から観覧して楽しむイベント「かわべの宵」は、コロナ禍におけるイベントの在り方の社会実験として企業関係者や市職員など約200人が参加した。元々、庶民にとっての鵜飼は川岸から楽しむものであり、地元市民が日常的に鵜飼を楽しむ文化を復興させ、川岸の利用を推進する。
・参加者は美濃和紙を用いた優美さが特徴の「岐阜提灯」を持ち、柄の長さを生かし、ソーシャルディスタンスを保った。またイベントの様子を観光プロモーション動画として、国内外に広く地域の魅力を発信している。
2.持続可能なかわまちづくりの推進
・「かわべの宵」の第2弾イベントとして、21年4月にワークショップ「かわべの時間」を開催し、岐阜市内の親子約50組が参加した。「水切り」や「ストーンペイント」などの川遊びを通して川が持つ本物の魅力を感じ、親しんでもらうことで、地域一体となり長良川を持続可能な地域資源として守っていくことを目指す。
きらり特別賞(コロナ禍対応)
日光商工会議所(栃木県)
新型コロナウイルス感染拡大を防ぎ、あの手この手で観光活性化!
主な取り組み
日光商工会議所では、コロナ禍でインバウンド需要が消失したことから、ターゲットを国内旅行客に絞り、「がんばれ日光!一致団結プロジェクト」として分散・周遊型のイベントや飲食店応援事業などを企画。地域の魅力を新たに捉えることで、「見る観光」から「体験型観光」まで幅広いジャンルの観光を増やすきっかけとなった。
1.新たな日光の魅力を体感できる多様なイベントを企画
・スマホアプリを活用した分散・周遊型イベント「探せ!徳川埋蔵金」、市内42店舗が参加した地元食材を利用した店独自のどんぶりメニューを競う「NIKKO-DONグランプリ」、過剰在庫となった土産品を特価で販売する「もったいない市」など、観光関連事業者を支援し、地域を盛り上げるイベントを多数実施した。
2.地域を巻き込んだ取り組みや新たな観光資源の発掘
・近隣商工会や地元自治会、事業者などと協力し、これまで脚光を浴びていない地域の名所旧跡の発掘や新たな魅力を開発。アフターコロナに向け「見る観光」から「体験型観光」までさらに幅広いジャンルの観光を推進する。
きらり特別賞(スポーツツーリズム)
阿南商工会議所(徳島県)
「野球をするなら阿南へ行こう‼」草野球の聖地“阿南”を目指す
主な取り組み
阿南市では、古くから野球が盛んな土地柄で、2007年、本格的な野球場の完成を契機に、阿南商工会議所を中心に160団体からなる「野球のまち阿南推進協議会」を組織化し、「野球によるまちおこし」を推進。「野球=産業」と捉え、野球による誘客と「阿波踊り」や四国の「お接待」文化などの郷土芸能や文化を生かした関係人口の創出につなげている。
1.地域の特性に着目した事業の展開
・大学野球や北信越地域の選抜高校野球出場校の大会直前合宿の誘致や、雨天時も練習が行える屋内多目的施設の建設など受け入れ環境を整備。
・野球大会や野球観光ツアーを通じて県外から年間約9千人を集客。年間約1億円以上の経済効果をもたらしている。
2.郷土芸能や文化を生かした関係人口の創出
・イベント実施時に「阿波踊り」を披露するなど地元の「お接待」文化によるおもてなし、地元チームとの対戦や私設応援団「ABO60」との交流により、地域の魅力を感じてもらうことでリピーター客増加、関係人口の創出につなげている。
奨励賞
新庄商工会議所(山形県)
守り継ぎ・新たに創り・次代に繋ぐ~地域の産業資源に光を!~
主な取り組み
・新庄商工会議所では、面積の8割が森林という地域の強みを生かし、「最上地域の『探求型』教育旅行×SDGs」をテーマに木質バイオマスによる再生可能エネルギー事業施設を活用した滞在型の観光コンテンツを開発し、教育旅行を誘致。通年での安定した観光誘客につなげた。
・工場見学を有料化し、受け入れ企業、地元エージェントに手数料が入る仕組みを構築。ツアーの質向上と需要増加の相乗効果が生まれた。
上越商工会議所(新潟県)
「越後謙信きき酒マラソン(ファンラン)」推進事業
主な取り組み
・上越商工会議所では、上越(上杉家)、上田(真田家)、甲府(武田家)の各商工会議所と「三国同盟」を締結し、広域観光連携を推進。2015年には、謙信公の居城・春日山城周辺をコースにした「越後謙信きき酒マラソン」を開催した。
・地元の食材を振る舞う給水所の設置やゴール後に日本酒の利き酒を楽しんでもらう「ファンラン」イベントは話題を呼び、関係人口増加に貢献。20年にはオンラインで開催し、コロナ後の誘客につなげる取り組みが注目されている。
笠岡商工会議所(岡山県)
ラーメンのまち笠岡全国展開プロジェクト
主な取り組み
・笠岡商工会議所では、地元のソウルフードである鶏ガラスープ・鶏チャーシューの中華そば「笠岡ラーメン」のブランド化を目指し、2009年には、「ラーメンのまち笠岡全国展開プロジェクト推進委員会」を設置。19年には地域団体商標に登録した。
・麺をテーマに広島県東部から岡山県西部の7商工会議所などと連携した「備中備後麺の道」では、広域で周遊を促す事業を展開中。カップ麺などの商品開発や首都圏での「笠岡ラーメン」の新規店開設など多彩な活動を続けている。
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