わが国経済の好循環を実現するためには、「下請等中小企業」の取引条件を改善することが重要です。本コーナーでは、全国に設置され、電話やメール、ウェブサイトにより無料で相談できる「下請かけこみ寺」(本部:公益財団法人全国中小企業振興機関協会)に寄せられた「親事業者の4つの義務と11の禁止行為」に関する問い合わせの中から、参考になる事例をQ&A形式で解説します。
Q.A社(資本金:3億円)はB社(資本金:1000万円)との取引を15年余にわたって行ってきましたが、製造している製品の需要が景気の低迷などにより落ち込んでおり、今後も回復はあまり期待できない状況にあります。このため、A社は製品の製造を大幅に減産しなければならない状況にあり、やむを得ず外注を停止することを社内で検討しています。取引を停止する場合、下請中小企業振興法の振興基準では、「下請事業者の経営に著しい影響を与えないように配慮し、相当の猶予期間を持って予告するものとする」と規定されていますが、どのように対処したらよいでしょうか。
なお、取引標準基本契約書には、取引を停止する場合は、個別契約に係る最終納期の3カ月前までにその旨を予告するものと規定されています。
A.振興基準は、下請中小企業振興法第3条により経済産業大臣が定める「下請事業者及び親事業者のよるべき一般的な基準」です。振興基準では、親事業者と下請事業者双方が適正な利益を得て、サプライチェーン全体の競争力向上につなげていく観点から、下請取引における下請事業者の事業運営の方向性や親事業者が行う発注などの在り方を具体的に示しています。また、振興基準に定める取り組みを促すとともに、問題となり得る行為について注意喚起もしています。相談内容については、基本的に取引標準基本契約書の規定に従って行うことになりますが、下請事業者の納得を得るためにも、下請事業者との間で十分な協議を行い、親事業者の事情などをきちんと説明されるとよいでしょう。
ポイント
振興基準は、下請中小企業の振興を図るため、下請事業者及び親事業者のよるべき一般的な基準を定めたものであり、振興基準に定める事項について、主務大臣は下請事業者または親事業者に対し指導・助言を行うことがあります。ただし、指導・助言は行政指導であって、振興基準に違反した場合の行政処分や罰則はありません。双方で納得するためにも十分な協議を行うことが大切です。
最新号を紙面で読める!