あまり聞きなれない「四ツ山漬」とはタイラギ(平貝)の貝柱の粕(かす)漬けのこと。四ツ山は地名で、福岡県大牟田市の有明海に面したエリア。かつて四ツ山沖でたくさん取れたタイラギの貝柱を、滋味豊かに粕漬けにしたのが始まりだ。製造元は大牟田市内に本社を置く「かなめ」。創業は大正9(1920)年という。貝柱を何度も漬け直して味付けをし、冬季熟成させた粕と合わせて漬け込んだ珍味。今も一貫した手づくりにこだわり、100年にわたり初代の味を守り続けている。
タイラギの貝柱はホタテよりも歯応えがあり、ギュッと締まった味わいが大変うまい。京都伏見、灘の有名酒の粕は甘く優しい香りがして、貝柱をふわりと包み込む。ああ上等の日本酒が欲しくなるなあ。
タイラギは東京湾、三河湾、瀬戸内海、有明海などが産地で、都内のすし店でも時々見掛ける。私は貝類に目がなく、タイラギがあったら必ず注文する。刺し身か塩焼きで食べるものと思っていたので、粕漬けには驚いた。日本が誇る〝珍味〟である。同じ〝珍味〟の海茸を粕漬けにした逸品もある。こちらもコリコリした食感と濃厚な味わいを楽しめる。詰め合わせもあるのでぜひお土産に。
Data
社名:かなめ今村食品工業
所在地:福岡県大牟田市高砂町62-4
電話:0944-53-6334
【大牟田商工会議所】
最新号を紙面で読める!