日本商工会議所の三村明夫会頭は12月16日、定例の記者会見で2021年の11月までの農林水産物・食品の輸出額が初めて1兆円を突破し、目標を達成したことについて、「関係者一同の念願であった。国の政策をはじめ、ジェトロなど数々の関係者の努力のたまものだ」と述べた。米国連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和縮小(テーパリング)加速については、為替相場が大きく変動せず、米国の株価が落ち着いている点を指摘。「事前に市場と丁寧に対話した結果だ」とFRBの対応を評価した。
三村会頭は、財務省の貿易統計速報で、農林水産物・食品の11月までの輸出額が1兆633億円と初めて年間目標の1兆円を超えたことについて、「コロナ禍の影響により世界各地でステイホームが続く中で、牛肉や日本酒など日本の優れた食品が選ばれたという相乗効果によるものだ」との考えを表明。「食品は一度おいしさが伝われば需要は継続する。一時的なブームではない」と述べ、今後も輸出が継続して増加していくとの見方を示した。
また、農産物全体の産出額の約1割が輸出されている点に触れ、「農林水産物が工業製品のように重要な輸出品目となるのは望ましいこと」と強調。「輸出の増加は1次産業の活性化、地方創生にもつながる。非常に喜ばしい」と述べ、関係各方面の努力を高く評価した。
FRBが、22年3月に量的緩和を終了し、同年中に3回に分けて政策金利の引き上げを実施することについては、「緩和した金融政策はいつか正常化に向かわなければならず、必然的な流れだ」と指摘。日本の金融政策については、「日本経済が本格的に回復していない中での対応となり、非常に判断が難しい」と述べた。
米国の利上げによる影響については、「米国への資金回帰が起こり、当然、日本にも影響は及ぶが、それ以上に新興国への影響が懸念される」との見方を表明。「過剰な金融緩和の時代から、世界全体が正常化に向かう一つの象徴的な出来事だと捉えている」との考えを示した。
国の基幹統計である建設受注統計を国土交通省が書き換えていた問題については、「あってはならないことだ。統計は、それが事実だという前提で、さまざまな経済予測や政策に用いられる。良心に従って集計し報告するのは当たり前で、その通り行われていなかったのは驚きだ」と批判。「政府は統計処理が正しく行われているか再度チェックし、安心して統計データを活用できるような環境を整備してほしい」と対応を強く求めた。
米国における中国の新疆ウイグル自治区からの物品輸入を原則禁止するいわゆる「ウイグル強制労働防止法」については、「人権は世界的に大きな問題であり、われわれはもっと関心を持つべき」と述べ、企業としてどのように対応するかについて「経営にも織り込むべき」との考えを表明。「具体的にどう行動するか考えることが重要だ。企業としても個人としても、自らの態度を決めなければならない時期が来ている」との見方を示した。