日本商工会議所の三村明夫会頭は1月20日、定例の記者会見に臨み、中小企業の賃上げについて、「付加価値を上げ、余力のある企業は賃上げすべき」とした上で、「中小企業の付加価値を高めるためには、取引価格の適正化が必要だ」と強調した。オミクロン株の感染拡大を踏まえたBCPについては、「サプライチェーン全体に影響を及ぼしかねない。必要不可欠だ」と指摘。感染症対策に着目した中小企業のBCP策定を支援していく考えを示した。
日商の三村会頭は、雇用・労働分野における経団連の基本的な考え方や今年の春闘のスタンスを示す「経営労働政策特別委員会報告」で中小企業が賃上げできる環境整備の必要性などが盛り込まれた点などについて、「経団連の示した方針は、私の考えと一致している」と評価。一方で、「トータルとして日本の賃金が上がるような方向を模索することが、日本経済の活性化につながる。しかし、現実にはそのような状況にはない」と指摘した。
日商の調査結果で2021年度に所定内賃金の引き上げを実施した企業(予定含む)は45・0%で、そのうち7割が、業績が改善しない中で人手確保のために賃上げせざるを得ない、いわゆる「防衛的な賃上げ」を実施していることを強調。また、中小企業の労働分配率が75~80%に上っている点などに触れ、「将来に向けた投資や賃金に資金を回すのは大変だ。賃上げの原資である付加価値自体を増やさなければ継続的に賃金を引き上げることはできない」と述べ、中小企業の多くが賃上げ余力に乏しい現状を訴えた。
中小企業の賃上げについては、「付加価値を上げ、余力のある企業は賃上げすべき」と述べた上で、「中小企業の付加価値を高めるためには取引価格の適正化が必要」と強調。官民で推進している「パートナーシップ構築宣言運動の一層の推進が求められる」と述べ、「今後、中小企業はもちろん、大企業の宣言社数も増やしたい。また、宣言数の増加のみならず、その実効性を確保していくことが重要だ」との考えを示した。
オミクロン株の感染急拡大で重要性が高まっている中小企業のBCP策定については、「従業員が少ない中小企業では、一人でも感染、もしくは濃厚接触者となってしまうと事業継続に支障が生じ、サプライチェーン全体にも影響を及ぼしかねない」と指摘。「企業規模に関係なくBCPは必要不可欠」と述べ、感染症対策に着目した中小企業のBCP策定支援を推進していく考えを示した。
世界文化遺産国内推薦候補に選定した新潟県の「佐渡島の金山」に関して、政府が最終決定を留保している件については、「佐渡金山は17世紀の金の鉱山としては世界最大規模。徳川幕府にとっては非常に重要な財政基盤であった。これらの時代背景を踏まえた上で世界遺産の候補の一つとして選定されたのだろう」と指摘。「政治的な話はよく分からないが、整々粛々と世界遺産として登録されることを強く望む」と述べた。
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