ロシアのウクライナ侵攻で、観光業界にも暗雲が立ち込めている。ロシア政府が欧州の航空会社の領内飛行を禁止する措置を取ったことから、欧州諸国とコードシェアしている便の飛行が困難になり、欠航便も多数出ている。飛行航路の変更や燃料価格の高騰も、大きな制約要因となってくる。
▼新型コロナウイルス感染症の流行で多くの打撃を受けている観光業界にとっては、さらに深刻な試練である。
▼そんな中ではあるが、ポストコロナに向けた国内のインバウンド需要回復に向けた動きが少しずつ加速している。
▼最近参加した広域観光DMOのある会合では、新年度施策として、観光客の旅行行動歴から、新規顧客誘客の阻害要因を分析するとともにリピーター誘客の要因を分析する広域DMP(デジタルマネジメントプラットフォーム)手法の具現化が掲げられている。圏内の個々のDMOや観光協会などのデータは互換性がなくバラバラな状態であるが、これらのデータを統合し、分析・活用するためのプラットフォームを構築しようというものである。
▼インバウンド顧客のタビマエ・タビナカ・タビアトの行動歴のデータを、宿泊や交通、アクティビティ、飲食・小売りなどの観光地域サービス会社と連携しDMOが総合的に管理してデータ分析と戦略立案に生かそうという狙いである。観光DXの一環ではあるが、観光インバウンドの広域戦略を練る上では有効な施策といえよう。
▼ラグジュアリーな旅行は言うまでもなく、旅はますます個人行動化している。団体客時代の勘と経験に頼るマーケティング手法はもはや通用しない。厳しい環境だが、こうした新たな取り組みに期待したい。 (観光未来プランナー・日本観光振興協会総合研究所顧問・丁野朗)
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