日本商工会議所はこのほど、調査研究報告書「『地域商社』の活用などによる各地商工会議所の販路開拓支援の取り組みについて」を取りまとめ、公表した。報告書は、全国の商工会議所を対象に実施したアンケート調査結果をベースに、地域商社とその機能に焦点を当てて、各地商工会議所の販路開拓支援の取り組みを四つの支援段階(開発、改良・流通、地域レベルの支援)に分けて整理。地域商社活用に向けた取り組みなどの解説とともに、商工会議所と役割分担しながら販路開拓の各種事業を実施している地域商社の事例も紹介している。
以下は、報告書の「各地商工会議所における地域特産品などの販路開拓支援に係る実態調査」結果のうち、「各地商工会議所からみた地域商社の取り組み」部分を抜粋したもの。調査期間は2021年10月15~11月19日。商工会議所イントラネット上で実施し・回答率は64・1%(330商工会議所から回答)。
報告書の詳細は、こちらを参照。
『地域商社』の活用などによる各地商工会議所の販路開拓支援の取り組みについて」(抜粋) 2022年3月 日本商工会議所
第Ⅱ部 5.各地商工会議所からみた地域商社の取り組み
※(2)以下の設問は、(1)で「地域内に地域商社がある」と回答した88商工会議所が対象(地域内に地域商社が複数ある場合には、当該商工会議所からみて、最も活発に事業を実施していると思われる1組織について回答)。
(1) 地域内における「地域商社機能を有する組織」(以下「地域商社」とする)の有無
・「地域商社がある」と4割弱の商工会議所が回答(「不明・分からない」と回答している106商工会議所を除いた224商工会議所で集計)
・地域内の地域商社の数は、「1」が66商工会議所(75・0%)、「2」が13商工会議所(14・8%)、「3」が5商工会議所(5・7%)、「4以上」が4商工会議所(4・5%)
(2) 地域商社の設立年
・地域商社は近年増加傾向(2010~21年で全体の7割強を占める)
・設立が近年の地域商社は「まちづくり」や「観光」にも取り組んでいるケースもある
・設立が古い地域商社は「物産協会」「産業振興センター」のような名称が多い
(3) 地域商社と商工会議所の連携状況
・回答商工会議所の3分の1が「地域商社と連携の上、事業者の販路開拓などについて支援している」
・連携状況の「その他」は「案件により、連携する場合がある」など
・商工会議所が連携して行っている支援内容
・役割の「その他」は「業務委託」「共同での事業実施」など
(4) 地域商社の中心的役割を担う組織などについて
・公的な「地方自治体」と「DMOやまちづくり会社・第3セクター(商工会議所が出資する組織は除く)」が中心的役割を担っている地域商社は39・0%
・「地域金融機関」が中心的役割を担う地域商社は、規制緩和に伴って近年に設立されたものが大部分
・「その他」は「地域商社自体」など
(5) 地域商社の設立の経緯(複数回答)
・4割強の地域商社の設立経緯は「地域の認知度向上、ブランド化推進」「自治体からの要請」
・「地域内事業者からの要望」で設立した地域商社は3割弱
・「その他」は「地域金融機関からの働き掛け」など
(6) 地域商社の取扱商品種目(複数回答)
・「農林水産資源を加工した食品」が最も多く、次いで「農林水産物」「工芸品」(商工会議所自身についての回答と同様の傾向)
・「その他」は「飲食メニュー」「取引先企業が取り扱っている商品」など
(7) 地域商社が「開発段階」において実施している業務(複数回答)
・地域商社の8割弱が商品の開発段階の支援を実施
・「地域資源の発掘・調査」が最も多く(6割)、次いで「マーケット調査」「資金調達」
・商工会議所自身についての回答と比較すると、地域商社は「マーケット調査」、商工会議所は「事業計画策定支援(事業スケジュールの検討、出口戦略策定など)」と回答している割合が高い
・ヒアリングした地域商社では、地域に埋もれている宝(食品、商品、技術)を発掘し、それを付加価値の高い商品に変換するために、才能あるクリエーターの力とコラボレーションして、今までに地域になかった高付加価値商品・ハイエンド商品を開発・販売している
(8) 地域商社が「改良段階」において実施している業務(複数回答)
・地域商社の8割弱が商品の改良段階の支援を実施
・半数の地域商社が「テストマーケティング」を実施しているものの、その半分程度が「品評会後の分析・改良支援」をしていない。商工会議所としては、地域商社のテストマーケティング後の分析・改良支援を通じて連携することも効果的と考えられる
(9) 地域商社が「流通段階」において実施している業務(複数回答)
・地域商社の9割が商品の流通段階の支援を実施
・ほぼ半数の地域商社が「国内市場の新規販路開拓(BtoB)」を実施している。この背景には、地域商社が独自に展示会などに出展するケースもある一方で、商工会議所による展示商談会や物産展などへの出展・出品支援の連携が挙げられる
・商工会議所の回答と比較すると、地域商社は「販売目的のECサイト開設」や「アンテナショップなどの販売施設の整備」などのBtoCに関する取り組みの実施割合が高い
・「その他」は「ふるさと納税」「市内店舗での販売」など
(10) 地域商社の収支状況
・ここ数年の収支状況は「収支均衡」が最も多く、「黒字傾向」と「赤字傾向」はほぼ同割合
・5年後の収支見込みは「黒字予想」と「収支均衡の予定」が同割合
・「黒字傾向」にある地域商社の8割は、5年後も「黒字予想」
・「収支均衡」にある地域商社の7割強が「収支均衡の予定」、1割強が「黒字予想」
・「赤字傾向」にある地域商社の5割が「5年後の収支見込みは分からない」、3割が「赤字予想」
(11) 商工会議所から見て、地域商社が工夫していると感じられる点
・最も工夫されている点(単一回答)として「地域内外への発信・PR」と「自治体や域内事業者などとの意思統一・協力関係の整備」を3割近くの商工会議所が回答
・工夫されている点(複数回答)は5割以上が「地域内外への発信・PR」と回答
・「その他」は「事業の継続性」「プロモーション」など
【調査結果からの示唆】
・回答商工会議所(「不明・分からない」を除く)の約4割(88商工会議所)の地域に地域商社が存在しており、そのうちの8割強が商工会議所と関係している。地域商社の半数以上が実施しているのは、「地域資源の発掘・調査」(約6割)、「テストマーケティング(BtoC)」(5割)であり、商工会議所の取り組みと重なる部分が多い。商工会議所の中には地域商社と相互補完しながら商品開発や改良、販売促進に取り組んでいる事例も見受けられる。
・地域商社の9割が販路開拓などの流通段階の取り組みを実施している。また、第Ⅲ部で紹介する事例のように、商品の開発や販路開拓だけでなく、観光やまちづくりに関する取り組みも実施するなど、地域全体の経済活性化に貢献しようとしている。商工会議所として、こうした地域商社の活用や積極的な連携について検討してはどうか。
(各地商工会議所における地域特産品などの販路開拓支援に係る実態調査結果より)
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