心の豊かさが重要視される現代社会で、ビジネスパーソンや外国人を魅了してやまないのが「禅(ZEN)」です。福井県には道元禅師が開いた「大本山永平寺」が禅の修行場として鎮座し、およそ800年にわたり連綿と受け継がれる「禅」の精神は、実践体験を基に本質に向き合う大切さを私たちに教えてくれています。
私は大学の一時期を米国で過ごしました。当時「禅」が大流行して、私の拙い知識が友人に大変喜ばれ、毎日質問攻めにあったことを覚えています。ある時「私が伝える日本が彼らの日本に対する価値観になる」という衝撃的事実に気付き、必死で日本文化を勉強し直したということがありました。当時の日本は国際化という言葉がはやっていましたが、それは単なる表面上の欧米化でした。実際に米国で暮らしてみて、多民族国家においてはそれぞれの文化や価値観の尊重が最も大切であることを強く学びました。
当社は事業拡大の過程でタイ、米国、そしてベトナムに現地法人を設立しました。社内の基本は、それぞれの国の歴史や文化、人々の価値観を尊重しながら同じ方向に進んでいけるよう確認し合うことです。社員と良好な関係を築いているのも、米国での体験が深く刻まれているからこそと思っています。「ダイバーシティ&インクルージョン」は企業価値を高める重要な経営戦略の一つとしていますが、「和敬静寂」の心を持ち、誰もが活躍できる「全機現」の禅的思考が根底にあるのかもしれません。
福井商工会議所は福井県・福井市との三者共同で、2024年春の北陸新幹線開業を見据えたまちの将来像「県都グランドデザイン」を策定しました。基本コンセプトは、〝誰もが主役に!楽しさあふれる県都〟。多様な人が集い、交流し、自ら新たな価値やにぎわいを生み出し、まちの魅力を高め、人が人を呼ぶ楽しさあふれる県都を目指しています。多様性をエネルギーに変え、まちのにぎわいの原動力にする「まちづくり版ダイバーシティ&インクルージョン」であり、禅の精神の息吹を感じます。
〝地味にすごい、福井〟、福井県の観光PRキャッチコピーです。「東尋坊」などの壮麗な自然、山河に挟まれた肥沃(ひよく)な土地と清らかな水が生んだ米・そば・地酒、「越前がに」を代表とする四季折々の海の幸、恐竜、歴史など、魅力の宝庫です。ぜひ福井にお越しになり、本質にこだわった福井の〝地味スゴ〟さをご堪能いただきたいと思います。
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