日本商工会議所の三村明夫会頭は10月20日、定例の記者会見で、金融政策について、「消費者物価を引き上げ、景気を刺激する効果は乏しかったという評価もある」と述べ、金融緩和の効果やコストなどについて「検証する時期に来ている」との認識を示した。中小企業の賃上げについては、「賃上げできない企業は人材確保で不利になる」と指摘。付加価値を高め、賃上げ原資を確保するために「どのように行動するか。個々の企業の判断と行動が重要だ」と述べ、中小企業の自己変革への期待を表明した。
三村会頭は、足元の円安局面について「今の円安は日本経済にとってデメリットの方が大きい」と指摘。「本来、円安になれば輸出数量が増加し、貿易収支にはプラスの影響が出るはずだが、大きく悪化している。円安のメリットを全く享受できていない」との考えを示した。
日銀の金融緩和策については、「異次元とも評される金融緩和策を日銀が採用してから9年が経過するが、消費者物価を引き上げ、景気を刺激する効果は乏しかったという評価もある」と述べ、「金融緩和の効果やコストはどの程度だったのかという検証する時期に来ている」と指摘。また、「為替レートに直接影響を与えるような具体策がないのであれば、円安をチャンスと捉えて、これを生かす方向で知恵を絞るべきだ」と述べ、越境ECやインバウンド需要の獲得など「個々の企業も覚悟を持って、努力してこの難局を乗り越えなければならない」との考えを表明した。
中小企業の賃上げについては、「賃金を含めた魅力ある待遇、多様で柔軟な働き方を提供できない企業は人を集められなくなる」と指摘。中小企業が付加価値を高め、賃上げ原資を確保するため、「どのように行動するのか、個々の企業の判断と行動が重要だ」との考えを示した。
また、3期9年の在任期間中の日商・東商の活動などについて総括するとともに、特に印象に残ったことについて、東日本大震災後の「遊休機械無償マッチング支援プログラム」など災害時の全国の商工会議所と事業者の対応に触れ、「515商工会議所のネットワーク、困った時に手を差し伸べ合う相互扶助の精神、非常時に即応できる体制を持っていることに深く感銘を受けた」と指摘。今後の課題については、「自己変革に挑戦する企業をどのように支援していくかだ」と述べた。
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