厚生労働省によると、4月時点の待機児童数は3千人を割り込み、前年から半減した。希望の保育園に入れるかという課題は残るが、働く女性には朗報だ。「仕事があればそれで済むわけでもない」と自社の女性スタッフの働き方に配慮してきた女性起業家は話す。「チームを率いる女性が増えなければ」と言うのだ。
▼さまざまな民間の調査では「管理職になりたくない」と回答する女性が多数を占める。社外メンターの育成・マッチング事業で女性起業家大賞優秀賞を受賞したMentor Forの池原真佐子代表取締役は、身近に女性管理職が少ない点も影響していると指摘し、そうした人材育成を進める「環境と機会がなかったのではないか」と分析する。経営陣に求められるのは、そんな風土を自社に根付かせていくことだろう。
▼10月には、いわゆる「産後パパ育休」制度が新設され、男性の育児参加が一段と促されている。ただ、子育ては乳幼児の段階で終わるわけではない。昭和には当たり前だった「父親と一緒に夕食を食べた記憶がない」といった働き方を、従業員に強いていては、優秀な人材は離れていくし、新卒の就活生にそっぽを向かれてしまう。
▼多様な働き方を認めることも魅力ある企業には欠かせない要素だ。コロナ禍では、一線を退いた看護師の復帰を求める声が上がった。中堅企業でも、出産や育児で退職したり、職場を変わったりした女性を、いま一度活用する方策を考えてはどうか。彼女たちが私的に得た経験は形を変えてビジネスに生かすチャンスがあるはずだ。「学びを怠らずアップデートしてきた女性を育成しようとする上司の配慮が求められる」と池原さんは期待している。 (時事総合研究所客員研究員・中村恒夫)
最新号を紙面で読める!