Q 子どもが生まれた男性社員から、1年間育児休業を取りたいとの申し入れがありました。営業の中核となっている社員ですので、1年間も休まれると会社に大きな影響が出ます。配偶者とは共働きですが、親と同居しており、親も孫の面倒が見られると思います。このような場合でも、育児休業を認めなければならないのでしょうか。
A 親と同居しており、親も孫の面倒が見られるとしても、その社員が1歳に満たない子を養育する親で、育児休業の取得要件を満たす労働者である場合には、育児休業を与えないということはできません。また、育児休業を申し出たこと、育児休業を取得したことをもって、その社員を不利益に取り扱うことはできません。
育児休業制度ってどんな制度?
1歳に満たない子を養育する労働者は、その事業主に申し出ることにより、育児休業を取得することができます(育児・介護休業法5条1項)。「1歳に満たない子を養育する労働者」には、当然、男性も含まれます。
雇用期間の定めのある労働者も、育児休業を取得することができます。2022年4月からは、有期雇用労働者の育児休業取得要件が緩和され、「同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること」との要件は撤廃されました。これにより、取得要件は「子が1歳6カ月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと」のみとなり、この要件以外は、有期雇用労働者についても、無期雇用労働者と同じ扱いとなりました(なお、引き続き雇用された期間が1年未満の労働者は、労使協定の締結により除外することも可能です)。
休業期間は、原則として子が1歳に達するまでですが、保育所に申し込んでいるが入れないなど事情があれば、子が1歳6カ月まで育児休業を延長することができ、さらに1歳6カ月以降も保育所に入れないときは最長2歳まで、労働者は育児休業を取得することができます。
2022年10月からは、育児休業を2回に分割して取得することができるようになりました。例えば、子が1歳になるまでの間に、夫が2回に分けて育児休業を取得することもできますので、その間、妻の育児の負担を減らすことができます。
事業主は、育児休業を申し出た、または取得した労働者に対して、解雇その他不利益な取り扱いをしてはなりません。また、職場において、上司や同僚が育児休業などを取得した労働者に対して育児休業などの取得を妨げるような言動を行わないよう、労働者に対する周知、啓発、相談体制の整備などの措置を講じなければなりません。
産後パパ育休制度の創設
男性の育児休業取得促進のため、育児・介護休業法が改正され、出生時育児休業(産後パパ育休)が創設されました(22年10月施行)。出生時育児休業制度は、育児休業とは別に取得が可能となる、次のような制度です。
①子の出生後8週間以内に4週間まで取得できる。
②分割して2回取得できる。
③取得の申し出は、休業の2週間前までにすればよい。
④労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で休業中に就業することができる。
例えば、夫婦共働きの場合、妻は、出産後8週間は産後休業となりますが(労基法65条2項)、この期間、母体は養生して体力の回復に努めなければなりません。他方、新生児は授乳の間隔も短く、特に手がかかります。このようなときに、夫も休業して育児を行うことができれば、妻としても大変助かります。また、労使協定の締結が条件となりますが、出生時育児休業では、休業期間中に就業することができます。就業をテレワークとすることで、柔軟な育児休業が可能となり、出生時育児休業が取得しやすくなります。出生時育児休業は、男女とも仕事と育児が両立できるようつくられた制度といえます。 (弁護士・山川 隆久)
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