金融庁は11月1日、中小企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人が会社の連帯保証人となる「経営者保証」の解除に向け、「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」「主要行等向けの総合的な監督指針」「系統金融機関向けの総合的な監督指針」および「漁協系統信用事業における総合的な監督指針」の一部改正(案)を取りまとめ、公表した。併せて同改正案について、12月1日までパブリックコメントを募集している。
経営者保証は、経営者による思い切った事業展開や活発な創業・事業承継、保証後の経営が苦境に陥った場合の早期の事業再生を阻害する要因になっているとして、一般社団法人全国銀行協会と日本商工会議所が経営者保証の解除に向けた取り組みを推進。2013年に解決策となる「経営者保証に関するガイドライン」を策定し(14年2月1日適用)、政府も「事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策」(19年5月)を実施している。
今回の改正案は、10月28日に閣議決定した「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」において、「個人保証に依存しない融資慣行の確立に向けた施策を年内に取りまとめる」とされたことを受け、経営者保証に関する対応について必要な改正を行うもの。これにより、経営者保障に依存しない融資慣行の確立が期待されている。
監督指針等の一部改正案の主な内容は次の通り。
○金融機関が保証契約を行う場合、保証人に対して説明した記録を残すことを明確化
・ 個人保証契約において金融機関は、保証人に対し説明した旨を確認し、その結果などを書面または電子的方法で記録する。
○金融機関が保証人に対し、説明すべき内容を変更
・ どの部分が十分ではないために保証契約が必要となるのか、個別具体の内容を拡充(注)
・ どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まるか、個別具体の内容を追加(注)
・ 原則として、保証履行時の履行請求は、一律に保証金額全額に対して行うものではなく、保証履行時の保証人の資産状況などを勘案した上で、履行の範囲が定められること。
※注 : 「経営者保証に関するガイドライン」に掲げられている要素を参照の上、債務者の状況に応じた内容を説明。その際、可能な限り、資産・収益力については定量的、その他の要素については客観的・具体的な目線を示すことが望ましい。
○金融機関が保証の説明をする際に求められる水準の明確化
・ 金融機関は、説明の際には、前述の保証を徴求する客観的合理的理由について、顧客の知識、経験などに応じ、その理解と納得を得ることを目的とした説明を行うことに努める。
○金融庁の監督内容について、以下を変更
・ 金融庁は、金融機関への各種ヒアリングの機会などを通じ、経営者保証に関するガイドラインを融資慣行として浸透・定着させるための取り組み方針などを公表するよう金融機関に促していく。さらに、監督上の対応として、重大な問題があると認められる場合には、業務改善命令を発出する。
詳細は、https://www.fsa.go.jp/news/r4/ginkou/20221101/20221101.htmlを参照。
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