独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)はこのほど、2022年度海外進出日系企業実態調査(全世界編)を取りまとめ、公表した。調査結果では、海外進出日系企業約7000社のうち、64・5%が22年に黒字を見込むも、自動車部品産業などで赤字企業が拡大。ゼロコロナ政策の影響で、中国では業績が「悪化」の企業が4割を超え、「改善」の割合を上回る。
今後1~2年で現地事業を拡大する企業は45・4%。新型コロナ禍前の水準に戻っておらず、コスト増加が足かせとなっている。他方、操業規制や行動制限の解除で、人材や飲食サービスの分野で投資意欲が回復している。
調査では、22年に「黒字」を見込む企業は64・5%となり、前年(62・6%)から1・9ポイント増加し、新型コロナ禍前の19年(65・0%)並み。一方の「赤字」は17・6%だった。
業種別に見ると、赤字割合は「ホテル・旅行」(60・5%)で高く、新型コロナ禍の影響が続く。「小売」や「飲食」など対面型サービス業種の赤字割合が依然高く。製造業では「輸送用機器部品」の赤字割合が大きくなっている。
今後1~2年で、現地事業を「拡大する」と回答した企業は45・4%と前年からほぼ横ばいで、新型コロナ禍前の19年(48・9%)には届かなかった。事業拡大意欲が高い業種は、前年同様、医療機器や食品/農水産加工品など。非製造業では人材紹介や飲食などが上位となっている。
今後の企業展開について、製造業の6割、全体の過半数の企業がサプライチェーンの見直しに取り組むと回答。原材料や輸送コストの高騰、供給途絶リスクの顕在化で、調達、生産、販売にかかる現地化戦略が加速している。今後1~2年で、日本人駐在員をコロナ禍前よりも減らす半面、現地従業員拡充の動きが進んでいる。ジェトロでは、「コロナ禍での駐在員の退避や一時帰国、リモート化の定着が現地化を加速させた側面も」あると分析している。
人権デューディリジェンス(DD)を実施する企業は全体の3割。法制化が進む欧州などで、取引先からの要請がDD実施を後押ししている。
脱炭素化に関しては「すでに取り組みを行っている」企業は4割を超え、前年比で1割近く増加。また、グリーン調達(調達先への脱炭素化要請)を行う企業は2倍超に増加しており、ジェトロでは、「サプライチェーン全体で削減意識が急速に浸透する中、未対応で取引機会が制限されるリスクもある」と分析している。
調査は、2022年9月、海外86カ国・地域の日系企業(日本側出資比率が10%以上の現地法人、日本企業の支店、駐在員事務所)1万9143社を対象に、オンライン配布・回収によるアンケートを実施。有効回答は7173社(有効回答率37・5%)だった。
詳細は、https://www.jetro.go.jp/news/releases/2022/71444b32965fd9ac.htmlを参照。
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