日本商工会議所の小林健会頭は12月20日、定例の記者会見で、日銀が金融緩和政策の一部修正を決めたことについて、「利上げで先行した欧米の金融政策に一歩近づくという意味で妥当な措置だと考える」と述べた。中小企業などへの影響については、「今後、借り入れコストが高まり、コストプッシュになる可能性はある」と指摘。政府・日銀に対しては、「これまでの金融緩和政策の点検・評価を行うとともに、出口戦略の検討を始める時期に来ている」との考えを示した。
小林会頭は、日銀の金融政策について、「従来から申し上げているとおり、政府・日銀は、これまでの金融緩和政策の点検・評価をしっかり行うとともに、出口戦略の検討を始める時期に来ていると思う」との見方を改めて表明。「そのような意味を踏まえ、今回の措置について私は納得しているし、利上げで先行した欧米の金融政策に一歩近づくという意味で妥当な措置だと考えている」と述べた。
中小企業への影響については、「金利が上昇することで、今後、借り入れコストが高まり、コストプッシュになる可能性はある」と述べ、「金融コスト上昇への対応の準備」の必要性を指摘。一方で、日米金利差の縮小で過度な円安が是正されるケースに触れ、「輸入コストの減少につながるという見方もできるため、金利上昇によって企業が受ける影響はまちまちだ」との見方を示した。
防衛費の財源問題については、「防衛力は社会保障と同様に重要なものであり、国民にとって必要不可欠なものだ。現下の情勢を鑑みれば、防衛力を強化することにわれわれは同意するし、その財源についても、その重要性を鑑みれば、単発ではなく恒久的な財源で賄うのが本来の姿だ」との考えを改めて表明。今回の議論の進め方については、「コロナ禍からようやく景気が回復しつつあるまさにこのタイミングで増税の話が出た」と述べ、「マインド面も含めて、経済活動に水を差すことになりかねない。増税の時期や規模を丁寧に説明する必要があるのではないか」と懸念を表明した。負担割合については、「法人税の割合が大きいという印象はある」と述べ、「『広く薄く国民全体で負担する』という基本スタンスに立てば、法人税の割合を減らす議論もあってよかった」との見方を示した。
会頭就任直後から訪問している東京商工会議所23支部や各地商工会議所の印象などについては、「中小企業は千差万別。地域によって状況は大きく異なり、カラーも違う」と指摘。視察先の企業からの声については、「東京の企業からは人件費の負担増に関する訴えが特に多かった」と述べ、社会保険料がわずかに上がるだけでも経営に影響する実態や、業績改善のない中で人材確保のために賃上げを実施した企業などの事例を紹介した。
人手不足に関しては、「パートタイマー、外国人労働者などあらゆる手を尽くして働き手を募集したが、周辺企業との人材の取り合いになっているとの声もあった」と述べ、特に運輸、観光、飲食業などの厳しさを指摘。人材確保のための「防衛的賃上げ」については、「もはや防衛的という言葉では足りないような切迫感がある」と述べた。
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