この時期、澄んだ冬空を見上げると、満月が煌々と照っている。平安時代、藤原道長はこの月を見て「この世をばわが世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」と藤原氏の栄華を誇った。一方、現代の宇宙好きな人は、近い将来日本人の 宇宙飛行士が月面に降り立ち、いろいろな作業をしている姿を思い浮かべるかもしれない。
▼アメリカ航空宇宙局(NASA)が計画して、それに賛同した日本を含めた23カ国が、ギリシャ神話の女神の名前を冠したアルテミス計画を進めている。この計画では、日本人の宇宙飛行士も月面に降り立つことになっている。
▼そのために、現在日本人宇宙飛行士の選抜試験が行われている。13年前は理系の人に限られていた資格も、今回は誰でも応募ができた。そのため、前回の4倍の4127人の応募があり、今月には日本の宇宙飛行士が決定される。
▼宇宙に関する知見は半世紀前と比較して飛躍的に増加している。その中でもとりわけ興味深いものは、暗黒物質(ダー クマター)だろう。この宇宙は目に見える銀河などの物質はわずか4%に過ぎず、残りの96%は暗黒物質やダークエネルギーが占めているようである。そのような考えに至った理由は、例えば銀河系は秒速220キロメートルで公転している。こんなに早く公転していても銀河系がバラバラにならないのは暗黒物質やダークエネルギーなどのおかげなのである。
▼現在、この暗黒物質を突き止めようと、欧州や日本はビッグバンの100憶分の1秒後の状態を再現しようとしている。欧州は周囲27キロメートルの円形の超大型加速器を駆使し、日本はリニアの形の加速器を使って実験を計画中である。近い将来、これらの実験の成果が待たれる。
(政治経済社会研究所代表・中山文麿)
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