政府は2月10日、GX実行会議や各省における審議会などでの議論を踏まえて策定した「GX実現に向けた基本方針」について、パブリックコメントなどを経て、閣議決定した。基本方針では、ロシアによるウクライナ侵略以降、エネルギー安定供 給の確保が世界的に大きな課題となる中、GXを通じて脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長の三つを同時に実現するため、「エネルギーの安定供給の確保を大前提としたGXの取り組み」「成長志向型カーボンプライシング(CP)構想の実現・実行」の2本柱を提示。今通常国会に必要となる関連法案を提出するとともに、今後、GX実行会議で進捗評価を定期的に実施し、必要な見直しも行う。
「エネルギーの安定供給の確保を大前提としたGXの取り組み」では、徹底した省エネの推進、再エネの主力電源化、原子力の活用などエネルギー自給率向上に資する脱炭素電源への転換などの取り組みを推進することなどを明記した。再生エネルギーについては、系統整備を加速し、2030年度を目指して北海道からの海底直流送電を整備。原子力については、安全性の確保を大前提に廃炉を決定した原発の敷地内での次世代革新炉への建て替えの具体化や、厳格な安全審査を前提に、「運転期間は40年、延長を認める期間は20年」との制限を設けた上で、一定の停止期間に限り、追加的な延を認めること、最終処 分の実現に向けた国主導での国民理解の促進や自治体などへの主体的な働き掛けを抜本強化することなどが盛り込まれた。
「成長志向型カーボンプライシング(CP)構想の実現・実行」では、「GX経済移行債」を活用した大胆な先行投資支援、CPによるGX投資インセンティブ、新たな金融手法の活用などの具体策を提示。長期にわたり支援策を講じ、民間事業者の予見可能性を高めていくため、「GX経済移行債」を創設し、今後10年間に国として150兆円規模の先行投資支援を実行する。支援先は、民間企業のみでは投資判断が真に困難な案件で、産業競争力強化・経済成長と排出削減の両立に貢献する分野への投資を対象に、規制・制度的措置と一体的に講じていく。
CPは、GXに取り組む期間を設け、エネルギーにかかる負担の総額を中長期的に減少させていく中で、低い負担から導入し、徐々に引き上げる。まず「排出量取引制度」を26年度から本格稼働し、化石燃料を輸入している事業者には「炭素に対する賦課金」を28年度から導入、電力会社など発電事業者には33年度から「有償オークション」を段階的に導入する。
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