かつて日本は世界一の半導体の生産国だった。1988年、その量は世界全体の50%を超えていた。しかし、昨年には5分の1の10%に沈んだ。しかも、最先端の半導体はつくることができない。2~3世代前の回路線幅が12~28ナノメートルのテレビ向けの半導体でさえ、台湾の台湾積体電路製造(TSMC)に熊本県に来てもらって、つくってもらう予定だ。過去の日本の半導体産業の栄光が輝かしかっただけに残念だ▼
半導体は国の経済力の基幹をなすものであり、各国政府とも巨額の補助金を投じてまで自国での生産にこだわっている。米国は昨年8月「CHIPSおよび科学法」を制定し、半導体業界に527億ドル(約7.2兆円)の補助金を拠出する予定だ。EUも同様に、これまで国是としてきた補助金禁止措置の例外として、430億ドル(6.3兆円)の開発資金を準備した▼
日本もようやく官民が協力してラピダスを設立し、北海道千歳市に半導体の工場を建設する。米IBM社にライセンス料を支払って2ナノメートルのロジック半導体の量産を目指すことになった。この半導体はスマホやスパコン向けのもので、2025年に試作ラインをつくり、27年に量産体制に入る予定だ▼
わが国は民主主義国家間で半導体を融通し合う「フレンド・ショアリング」に入っている。半導体は権威主義国家の生産に頼ることなく自国でつくるべきだ。そのためにも、5~10年後の社会の半導体実装がどのようになっているかにつき、精緻な需要予測を描き、それを実現するための的確な設計・開発計画を策定し、かつパワー半導体やAI半導体、それに省エネに資する3D半導体などの次世代半導体の開発にも注力してもらいたい
(政治経済社会研究所代表・中山文麿)
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