在中国の日系企業で組織する日本人商工会議所「中国日本商会」はこのほど、中国各地の日系企業が直面しているビジネス環境上の課題の分析や解決のための建議を取りまとめた「中国経済と日本企業2023年白書」を公表した。中国政府(中央・地方)への建議として取りまとめるため、中国日本商会の会員企業と中国各地の商工会組織に所属する日系企業(法人会員8353社)を対象に意見募集。建議総数は505件で、全28章に及ぶ白書の執筆は、中国ビジネスに最前線で取り組む中国日本商会の会員企業などから約50人が担当した。
建議の全体コンセプトは「公平性の確保(特に予見性・透明性の向上)」で、「税務に関する問題」「データの越境・管理に関する問題」の2点を今年の重点分野として設定。エグゼクティブサマリーとして、前年度からの改善事項のほか、カーボンニュートラルに関する日系企業の動向や関連建議を掲載している。
重点分野のうち「税務に関する問題」では、個人所得税について、外国籍人員が適用可能な免税措置の継続適用が2023年末までとなっており、そのまま廃止されると外国籍人員を抱える企業の税負担が大幅に増加することから、外国籍人員に適用される免税措置の無期限延長を要望。「データの越境・管理に関する問題」では、データ三法(サイバーセキュリティ法、データセキュリティ法、個人情報保護法)などのデータの国外越境移転に関する法規の運用において、事前ガイダンスの提供や関係政府部門間の調整・連携、運用で外資企業が差別的に扱われないことを要望している。
また、今年の建議を集約した「建議の三要素」を「公平な競争」「対外開放」「行政の規制運用・手続」として提示。「公平な競争」では、公平競争の阻害となっている制度の見直し、政府調達や標準の策定などにおける国内企業と外資企業への公平な待遇、知的財産権制度の一層の改革の重要性を指摘。「対外開放」としては、製造・サービス業分野での外資参入制限の一層の開放、グローバルスタンダードのさらなる採用を求めるとともに、「行政の規制運用・手続」では、法治政府・サービス型政府の建設のため、行政手続の簡素化・迅速化、許認可・認証の大幅な廃止に加えて、制度の運用・解釈の統一や制度変更の際の十分な準備期間の確保の重要性を要望している。
昨年の建議のうち、改善が見られた項目については「新型コロナウイルスに関する各種防疫規制緩和」「企業結合の届け出基準引き上げ」「外債枠拡大」などを指摘。日系企業のカーボンニュートラルに関する取り組みについては、脱炭素投資の費用対効果や収益化、コスト負担の重さ、制度の不明確性や複雑性、補助金などの情報の把握が難しい点の課題解決などを要望している。
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