健康診断の目的は、健康状態を調べることです。会社は従業員の健康を守る観点から、その実施が法律で義務付けられています。対象は基本的に20歳以上です。
健診や人間ドックの受診率は年々増加しており、最新の調査では全世代平均が64.3%と最も高くなりました。一方、年代別に見てみると、受診率が高いのは男女ともに40~50代で、40歳未満は低い傾向にあります。「時間が取れない」「面倒」「費用がかかる」などの理由が上位を占めていますが、その裏には「まだ若いから大丈夫」という意識があるのではないでしょうか。
しかし、今は問題がなくても、それが永遠に続くわけではありません。例えば、親やきょうだいに高血圧や心臓病、糖尿病などの病気がある場合は、将来的に同じ病気になるリスクがあります。その芽を早期に把握するためにも、毎年健診を受けることが有効です。
さらに、検診もあります。健診と読みは同じですが、検診はがんなど特定の病気の早期発見を目的に行われます。主に市区町村が実施しており、受診料は無料または安価で、肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮がんなどの早期発見が可能です。特に女性は30代が乳がん・子宮頸(けい)がんの好発年齢なので、積極的に受診しましょう。
産業医の立場から伝えたいことは、加齢とともに発症する病気は増えていくということです。だからこそ若いうちから健診・検診をきちんと受け、自身の健康状態をチェックしてほしいのです。さらに、結果を毎年見比べて経年変化を知ることで、生活改善による病気の予防、早期発見につなげて、良い健康状態の維持を目指しましょう。
特に、学生時代に運動をしていた人は、健康を過信しがちな傾向があり要注意です。社会人になって運動をやめても食欲は変わらず、肥満になり、高血圧や脂質異常症、高血糖などになる人が少なくありません。さらに、コロナ禍による運動不足や食習慣の変化で健康状態が変わった人もいます。若いうちから健診や検診の受診の方法や、検査結果の見方を学んで、今後の健康維持・向上に活用してください。
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