中小企業の業況は、全体として見れば改善傾向にありますが、依然として多くの中小企業が、大企業との生産性の格差、経営者の高齢化、人手不足など大きな構造的課題に直面しておられます。
中小企業の働き手不足は、なんと60万人を超えまして、過去最高水準となりました。さらに、長時間労働是正や同一労働同一賃金といった「働き方改革」への対応も必要となってきております。働き手不足や働き方改革への対応は大きな大変難しいチャレンジではありますが、一方で、これは生産性向上を進める絶好のチャンスでもあります。
このような、「ピンチをチャンスに変える」チャレンジをしっかりと後押してまいりたいと思います。そういった思いから、「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」により、生産性向上につながる投資をしっかり後押ししたいと思います。今年度はこれまで3万社の支援をさせていただいております。
また、政府自らも皆さまの生産性向上のお役に立てるよう、例えば、補助金申請のシステムを新たに構築し、無駄な手続きを省いて皆さまのスマホから直接、補助金の申請をしていただけるようにすることを目指すなど、申請手続きの抜本的な簡素化も進めていきたいと思います。
経営者の高齢化も大きな課題です。直近5年間では約40万社の中小企業が減少しています。さらに、2025年には経営者の6割が70歳を超え、多くの中小企業が廃業する結果、約650万人の雇用が失われるとの分析もあります。事業承継は、こうした「待ったなし」の課題への有効な解決策の一つです。
そこで、平成30年度の税制改正では、法人の事業承継税制の抜本的な拡充を行いました。また、来年度は「個人事業者」の事業承継を円滑化するための税制措置の創設を目指して、政府をあげて事業承継を後押ししていきます。
中小企業政策と地域経済は、切っても切り離せない関係で結ばれています。そして地域経済の活性化には、地域で頑張っている企業の「稼ぐ力」をとことん伸ばしていくことが重要です。
このため、地域経済を牽引(けんいん)することが期待される企業として、昨年12月に、全国から選りすぐりの企業2148社を「地域未来牽引企業」として選定させていただきました。皆さまの中にも選定された会社がたくさんあると思います。
また、昨年7月に施行された地域未来投資促進法に基づいて、地域経済を引っ張る新たな事業にチャレンジする1186社の事業計画を承認させていただいております。これらの事業者の皆さまには、税制優遇や補助金の優先採択といった支援策を講じてまいります。
経済産業省は、これまでの「薄く広く」の発想を転換し、地域の中核となるこうした企業への支援を集中的に実施してまいりたいと思います。
かの渋沢栄一翁は、「新しき時代には新しき人物を養成して、新しき物事を処理せねばならない」そうおっしゃいました。
その時から、日本経済における中小企業の役割は、一時たりとも減じておらず、むしろ、絶えず変化する社会の中で、チャレンジをし続け、経済成長の源泉を担う役割をますます担っていただかなければなりません。 (9月20日)
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