土木・舗装を軸に事業展開するサン山口は、1962年に創業。深刻な人材不足が課題であることを承知の上、三代目を継いだ山口大志さんは、多角的に社内改革を推進し、建設業のイメージアップを掲げる。若い人材から、働いてみたい会社に選ばれたいと、未来を見据え、地域貢献に奔走する。
家業を継ぐことを決意 三人兄弟は別々の道に
1962年に創業したサン山口は現在、創業者の孫に当たる山口大志さんが三代目代表取締役を務めている。 「祖父は岡山県出身ですが、建設会社に勤めていた際に干拓工事で下関に来たことがきっかけで、この土地がいたく気に入り、移り住んで創業したと聞いています」
かつて、祖父の代に土木業で会社を興し、舗装工事、建築工事、環境石材、産業廃棄物処理、宅地建物取引業と6事業まで事業を拡大。岡山市や下関市を中心に施工実績を上げ、下関市の建設業協会や土木協会などの要職にも就く。祖父も父も、下関商工会議所の議員を務めるなど、自社および地域の発展に注力してきた。
祖父と父が、各事業を盤石なものにする中、三代目をどうするかという話が持ち上がる。 「小学生の頃から、いつかは祖父と父の経営する会社に入るのだと思っていました。ですが、中学生のときに自宅を新築したことをきっかけに興味を持った、建築の道まっしぐら。大学も建築学科を専攻しました」
山口さんは3人兄弟の次男だが、2歳上の兄は大学准教授となり、弟は料理人を目指していた。家業とはまるで違う道を進む兄弟の中、自分の夢が一番家業に近かった。山口さんは大学在籍中に兄と相談し、家業を継ぐことを決めた。だが、家業に建築事業はあっても、山口さんの夢である一般住宅の建築は事業外である。そこで、5年間という期限を自らに課し、住宅設計を手掛ける九州の住宅メーカーに就職する。自らの夢をかなえ、約束通り5年後の2008年2月、サン山口に入社した。
ISO取得や意識改革 DX推進と旧態依然を一掃
事業承継を前提にした家業入りは、いきなり役職に就く場合も少なくない。だが、山口さんは自ら希望して一般社員として入る。 「建築と土木は全く別の業種であり、携わる人のタイプも違います。工事現場に入って、土木についてイチから学びつつ、土木施工管理と舗装施工管理の資格を取得していきました」
同時に着手したのがISO(国際標準化機構)規格の取得だ。同社がすでに認証取得していた品質マネジメントシステムに加え、労働安全衛生関連のISO45001、環境関連のISO14001の取得に奔走する。両マネジメントシステムの責任者となり、マニュアルを作成する過程で「社内の物事の流れを知ることができた」と振り返る。
その後、約6年間副社長を務め、20年、三代目代表取締役に就任する。そして、就任時から新機軸を次々と打ち出していった。 「経営に携わるようになって進めたのが、トップダウン組織の改革です。指示待ち体制からの脱却を促し、社員自ら考え、提案できる成熟した組織に移行すべく、人材育成に力を入れていきました」
「安全第一」の精神を継承し働きやすさに磨きをかける
さらにICT(情報通信技術)を活用した施工へ転換する。当初は年間1案件程度だったが、23年現在では案件の半分近くで取り入れられ、工期短縮や施工精度の向上、安全強化に役立てていった。 「ICT施工の導入は、人手不足の課題解決にもつながっています。測量や建設、事務作業など、あらゆる面で2〜3人でやっていた作業が1人で済み、業務効率は2〜3倍アップしました」
同社は、舗装工事において自社機械を保有し、自社施工班を編成していて、専門工事を得意としてきた。22年にはさらに最新設備を導入し、施工品質と作業員の安全性を向上。完全週休二日制など待遇改善も図り、23年8月には社員らの意見を取り入れた機能性、ファッション性を考慮した作業服への一新と、改革を進めた。 「先代から続く『社員の安全第一』の方針を踏襲し、働きやすい環境、建設業のイメージアップを図ることで人材確保につなげたい一心です。社長に就任した20年に比べて売上高が1・5倍に伸びましたが、その背景には20代の若手人材の成長、躍進が大きいです」
今後、さらに100年先へと事業が発展するためにも「社員あっての会社です。3Kといわれる建設業を、働きやすく、安全で、カッコイイ職種にイメージチェンジすることが重要課題」と意気込む。そのためにも地域活動への参画や工事現場の見学を通じ、地元で建設業に関心を持つ人を増やしていく。直接的な効果は見えなくても続けることで未来につないでいきたい。そして、かつての夢にもいつか再び着手できれば─と思いは熱い。 「日本最長のワイヤーロープアトラクションとなる『関門海峡メガジップライン』の実現に向けた取り組みや、国際的なクルーズ客船の寄港拠点に選ばれるなど、下関が沸き立つ今、土木、舗装面で貢献して、働いてみたい職業、会社に選ばれていきたいですね」
地域の追い風を自社のチャンスにすべく、同社の改革は進む。
会社データ
社名 : 株式会社サン山口
所在地 : 山口県下関市小月茶屋2-8-30
電話 : 083-282-2678
HP : http://www2.odn.ne.jp/sunyama/
代表者 : 山口大志 代表取締役
従業員 : 25人(グループ会社含む)
【下関商工会議所】
※月刊石垣2023年11月号に掲載された記事です。
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