トラック輸送をはじめ、物流は社会に欠かせないインフラだ。価格の上昇やサービスの低下などで他の産業や消費者にも大きな影響を及ぼす恐れのある、物流の「2024年問題」。働き方改革関連法によって2024年4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働時間が960時間以内に制限されることで発生が予想される、さまざまな問題を指す。持続可能な物流の実現へ何ができるのか、企業はどう対応すべきなのか。
運送会社とプロジェクトチームをつくり新体制と新設備で荷揃え行う
長野県長野市に本社があるR&Cながの青果は、日本全国の産地から青果を集めて各地のスーパーなどへ販売している。グループ内に運送会社を持つ同社は、全社員に「2024年問題」を理解してもらおうと勉強会を開くとともに、運送会社と一緒にプロジェクトチームを立ち上げて、成果を上げている。従来は運転手が行ってきた荷揃(ぞろ)えを担うなど、新たな取り組みも進めている。
青果卸2社合併の新会社勉強会開き運送会社と協力
長野県の青果卸は長年、長野県連合青果と長印という2社が担ってきたが、その2社が合併し2022年4月にR&Cながの青果が誕生した。同社の売り上げは全体で約1000億円、比率は県内が約6割、県外が約4割である。長野県内に6拠点あり、このうち長野市と上田市の2拠点は日本全国の産地から青果を集めて各地のスーパーなどへ販売している。 「『2024年問題』とは何かを社員全員が理解していないと社内の協力が得られないので、22年夏から勉強会を始めました」と言うのは、同社社長の倉﨑浩さんだ。勉強会に参加したのは主に管理職で、数回に分けて約200人が集まった。同社グループ内には運送会社R&C物流(トラック約120台保有)があるため、その会社の担当者も交えた12人のプロジェクトチーム(以下PT)を立ち上げた。 「最初は運送会社と意見がぶつかるばかりで、今の体制なら遠方には荷物を運べないと言われました」と語るのは、物流管理部統括マネージャーで営業本部営業企画部長の宮崎直樹さんである。
課題は、運転手が荷物を集めてトラックに載せるまでに時間がかかることだった。その作業は①市場内から自分が運ぶ分の野菜や果物を探す、②フォークリフトで一カ所に集める、③集めた荷物をパレットなどに積む、④トラックに積み込む。この一連の作業を運転手が行うのが業界の常識で、特に①②の作業(荷揃えという)は同社の市場が非常に広いため「宝探し」とも呼ばれるほど時間がかかっていた。そこでPTは荷揃えを卸業者側が行うことにした。③④については、青果は重さも箱の大きさもバラバラでパレットや荷台に積むにはノウハウが必要なため、従来通り運転手が行うことにした。
新体制「専担チーム」出発時刻2時間前に荷揃え
同社は23年4月から、荷揃えを行うため物流部の勤務体制を見直した。これまでの日勤と夜勤に加え、その間の時間帯に勤務する「専担チーム」を6人体制で新設した。専担チームは運送会社からトラックの出発時刻など詳細な情報を得て、出発時刻の2時間前までに荷揃えを行う。トラック駐車場は行き先別に設定されており、例えば富山方面へ運ぶ荷物は富山行きのトラックが駐車するスペースの前に集積される。荷揃え場所を確保するため、同社は約2500万円をかけて市場内とトラック駐車場との間に大型の屋根を設置した。こうして専担チームが荷揃えを担うことにより、これまで4時間かかっていた運転手の作業が2時間に軽減された。
新たな体制で業務を進めているものの、新たな物流システムを理解してもらうための人材教育は大きな課題である。また、早めに荷揃えを行うと荷物を屋外で待機させることになり、夏の猛暑の際には商品が劣化することになる。そのための対策として予冷設備の設置も検討しているそうだ。
また同社では「2024年問題」への対応として、取引先であるスーパーからも協力を得られるよう働き掛けている。
九州など遠方産地からの声「大阪まで取りに来て」
例えば青果の注文を午後1時までに確定させることである。これまでは午後4時頃に追加注文が入ることがあったが、それではトラックの配車に間に合わないという。 「青果は鮮度が勝負。夜までに入荷したものは夜のうちに出荷して、翌日の朝には取引先であるスーパーに届けたい。しかし、青果は工業製品と違い、荷物の大きさや重さがバラバラで自動化できないので、人海戦術に頼らざるを得ないんです」と言う倉﨑さん。特に同社は北海道や九州という遠方にも取引先があるため、「2024年問題」は死活問題なのだという。
同社は全国の産地から青果を集めているが、九州などからは「『2024年問題』があるから長野まで運べない。大阪か名古屋まで取りに来てほしい」という声も上がっているそうだ。また着荷主の立場としては今後、産地からトラックが到着後に荷物を降ろす作業が必要になる可能性もあり、そのための人材確保も課題となっている。
同社の今後について倉﨑さんは、経営理念である「四方よし」を取り上げて「世間・買い手・売り手・社員の四方がより良くなるように、長野県から全国へ流通サービスの創造に努めたい。消費者ニーズを生産者に届けて新たな野菜や果物をつくってもらうなど、市場という概念を超えて日本中の人にわれわれが提供するものを食べてもらいたいです」と語った。
会社データ
社 名 : 株式会社R&Cながの青果(アールアンドシーながのせいか)
所在地 : 長野県長野市市場3-1
電 話 : 026-285-3333
HP : https://rcns.jp
代表者 : 倉﨑浩 代表取締役社長
従業員 : 483人
【長野商工会議所】
※月刊石垣2023年12月号に掲載された記事です。
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