シズル感あふれる手描き看板で道行く人にお店の魅力を語りかける
Orangette Chalkart 代表 金城 まみ(きんじょう・まみ)
身近なチョークアートに可能性を感じて
私はもともと、アパレル販売員でした。販売員時代、ふと休憩室で手に取った雑誌の1ページでチョークアートを知り、これだ!と直感し、学んで資格を取りました。さまざまな店舗などからオーダーを受け、看板を制作しています。
チョークアートはオーストラリア発祥とされ、日本でも20年ほどの歴史があります。絵画的要素とデザインの要素が融合したアートで、生活にマッチしていて商業性があることが魅力であり、可能性を感じました。カフェやレストランで、黒板にメニューなどが描かれたチョークアートを、皆さんも目にしたことがあるのではないでしょうか。食べ物のおいしそうな瞬間・臨場感(シズル感)を切り取って絵に反映させ、集客や売り上げアップに貢献できればと思い、日々描いています。
制作する上で大切なのが、クライアントへのヒアリングです。店舗の魅力や強みを引き出し、視覚的かつ効果的に看板に反映。時には、店主自身も気付いていなかったような店舗の魅力を発見し、それらを看板に描くこともあります。美しい看板よりも伝わる看板をつくることを意識しています。デザインと訴求力のバランスが合致した時、看板として最大限の力を発揮すると思うのです。
手軽なシズルボードを開発講座などで普及を目指す
看板づくりを始めて数年がたち、課題が見つかりました。チョークアートでは通常、発色の良いオイルパステルという画材を使用し、消せない加工をします。時間や費用が掛かるため、それ相応の価格ではあるものの、予算オーバーを理由に注文を見送られることが度々ありました。「お店の方にとって本当に必要とされる看板はなんだろう」と考え、絵のクオリティーは多少下がっても費用を抑えて制作でき、打ち出したいメニューをスピーディーに描いて消せる看板、という案にたどり着きました。
画材や描き方を研究し、レイアウトや着色に法則性を持たせた「シズルボード」という独自ジャンルを生み出しました。費用を下げても、シズル感があり集客につながる看板制作が、実現できたのです。飲食店スタッフが店舗で描けるようになるための講座も始めました。
シズルボードの主な画材であるキットパスは、環境配慮がされ、製造会社は障害者雇用7割を実現し「日本でいちばん大切にしたい会社」としても知られています。素晴らしい日本ブランドのキットパスとともに「ジャパニーズシズルボード」を、日本文化の一つとして普及していきたいです。かつてチョークアートを学ぶため、日本からオーストラリアへ留学する人がいたように、数年後には海外から、シズルボードを学ぶ留学生が来ることが夢です。
今後は「シズル看板グランプリ」という、対戦形式で看板をつくるイベントも計画しています。手描きならではの温かみとシズル感、スピーディーに描ける爽快感を多くの人に楽しんでもらえる機会になると思います。
会社データ
社名 : Orangette Chalkart(オランジェット・チョークアート)
所在地 : 神奈川県大和市南林間2-11-19陽光ビル3F 3-A
創業 : 2013年
事業概要 : サービス業(手描き看板制作および教室)
HP :https://www.orangette-chalkart.com/
【大和商工会議所】
※月刊石垣2023年12月号に掲載された記事です。
最新号を紙面で読める!