中小企業庁は11月28日、9月に実施した「価格交渉促進月間」のフォローアップ調査結果(速報版)を公表した。価格交渉については、「発注企業からの交渉申し入れをきっかけに交渉が行われた」企業の割合が前回調査(2023年3月)の約2倍に増加し、「コストが上昇し、交渉を希望したが、交渉が行われなかった」企業の割合は減少。中小企業庁では、「価格交渉しやすい雰囲気が徐々に醸成されつつある」と分析している。
一方で、「コスト上昇したが、下請け側が『価格交渉は不要』と判断し、交渉しなかった」割合が16.8%存在。この中には「交渉資料を準備できない」「価格改定の時期が数年に一度」などの理由で、機動的な価格交渉ができていない企業もあり、依然として課題となっている。
価格転嫁については、コスト全体の転嫁率は、前回調査(47.6%)と比較して1.9ポイント減少し45.7%。一方で「全く転嫁できなかった」または「コストが上昇したのに減額された」企業の割合は減少しており、価格転嫁の裾野は広がりつつある。
価格交渉の状況を業種別に見ると「造船」「機械製造」「化学」で相対的に協議ができている一方で、「製薬」「不動産・物品賃貸」「通信」では協議に応じない発注側企業が多い。コスト増に対する価格転嫁の状況は、「化学」「食品製造」「電機・情報通信機器」などの業種で転嫁率が良く、「トラック運送」「放送コンテンツ」「通信」などの業種が低い結果となった。
中小企業庁では、今後の価格転嫁・取引適正化対策について、11月29日に公表された「労務費の指針」が交渉・転嫁の現場で活用されるよう経済団体などを通じた周知を行うほか、2024年1月には企業リスト(発注企業ごとの交渉・転嫁の状況の評価)の公表、評価が芳しくない発注企業の経営者トップへの事業所管大臣名での指導・助言を実施。また、パートナーシップ構築宣言のさらなる拡大・実効性の向上にも取り組む。
アンケート調査の実施期間は10月10日~11月10日で、回答企業数は3万5175社(回答から抽出される発注側企業数は延べ4万2924社)。中小企業に発注側事業者(最大3社分)との間の価格交渉・転嫁の状況を問うアンケート票を送付する形式で実施している。
詳細は、https://www.meti.go.jp/press/2023/11/20231128005/20231128005.htmlを参照。
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