人は運動しすぎるとその後数日、筋肉痛になります。慣れない行動に体が追い付いていないのです。実は脳でも同じ反応が起きていて、イレギュラーな行動に対して脳が拒絶反応を起こすので、三日坊主になってしまうらしいのです。
例えば、本を読み慣れていない人が読書をするのは、とても疲れるものです。私は船井総研に入社するまで、読書の習慣がありませんでした。自分の好きな日本の歴史資料集とアインシュタインの本以外、まともに読んだことがなかったのです。
船井総研のコンサルタントになって、舩井幸雄氏の膨大な著書やほかのビジネス書を読まないといけない立場になりました。出張時の新幹線の中で読もうと考えたのですが、すぐに飽きてしまって、内容が入ってきません。苦痛でしたが、好き嫌いを言っている場合ではなかったので、三日坊主にはならずに続けていると、3カ月もしないうちに読む速度も上がり、2時間半の乗車時間でちょうど一冊を読み切れるようになりました。そうなってくると、月に30冊くらいは軽く読めるようになり、読む本がないと心もとない感じがするほど自分が変わりました。
ある脳科学者によると、人間の脳は「始めてから21日たっていない行動」に対しては、その行動を脳に入力する「記憶細胞」がまだつくられておらず、拒否反応を示すとのことです。自分自身の新しい行動を脳が受け入れ、その行動を習慣として保存するのに「21日」かかるとしたら、とりあえず21日間根気強く繰り返せばいいのです。
読書に限らず、仕事の報告書や営業のアポ電、上司との世間話、部屋の片付け、手づくり弁当など、全ての行動に当てはまることです。最初は面倒だったり難しかったり、嫌で仕方ない時期がありますが、それを乗り越えると、嘘のように普通にできるようになるものなのです。
嫌で仕方ないのは、まだ脳がその行動を受け入れず、筋肉痛を起こしているのです。日を追うごとに筋肉がついてくると嫌な気分が少なくなり、21日を過ぎた頃には、普通の事としてできるようになります。
「石の上にも三年」という言葉がありますが、これは昔のこと。今の人にそんなことを言っていたら、何も言わずに辞表、ということになってしまいます。でも、脳科学を持ち出して、「21日」と言えば、頑張れるのではないでしょうか。
一生を支える新しいスキルを自分に習慣づかせるため、21日くらいは我慢して、筋肉痛を乗り越え、成長できる自分になりたいものです。新年を迎えるに当たり、皆さまの組織でも人材育成などに、お役立ていただければ幸いです。
※「社長の最大の役割(2)」は2月号に掲載を予定しています。
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