日本商工会議所の小林健会頭は2月8日、連合の芳野友子会長と都内で会談し、持続的な賃上げ、価格転嫁、人手不足への対応などについて意見交換した。中小企業の持続的な賃上げに向け、取引価格の適正化などを後押ししていく考えで一致。小林会頭は、「人への投資で経済成長を目指す点で政労使は同じ方向を向いている」と述べたのに対し、芳野会長は、「政労使が同じ方向性であり、この好機を生かすべきである」と応じた。
日商の小林会頭は、「日本経済が力強さを取り戻すために、物価と賃金の好循環により実質賃金を上げていかなければならない。その鍵となるのは雇用の7割を占める中小企業の賃上げだ」と指摘。「中小企業の中でもより規模の小さな事業者にも、働く人の中でも比較的賃金の低い非正規雇用者にも、賃上げの動きを広げていく必要がある」との考えを示した。 今年4月以降の賃上げについて、現在集計中の調査に触れ、「『賃上げを行う予定』とする中小企業は6割強。そのうち約6割が、業績の改善を伴わない『防衛的賃上げ』と回答しており、2023年度と変わらない」と指摘。「賃上げの流れを確かなものにするためには原資の確保が不可欠で、中小企業自らの自己変革による付加価値向上とともに、価格転嫁の商習慣化が重要」との考えを示した。
また、政府の省力化投資や労務費の転嫁対策の取り組みを評価。「こうした枠組みを活用し、後は実行あるのみである。日商としても経団連や経済同友会などとも連携して進めていく」と述べた。 構造的な賃上げに向けては、「『良い製品や良いサービスには値が付く』という考え方を社会全体で共有していくことが何より重要」と強調。「BtoCを含む価格転嫁は消費者物価上昇につながり、働く人の生活にとっては厳しい面もあると思うが、労働組合の立場からも取引価格の適正化に声を上げていただき、消費者でもある労働者に働き掛けていただきたい」と連合に協力を要請した。
連合の芳野会長は、今年の春闘について、「経済も賃金も物価も安定的に上昇する経済社会へとステージを転換する正念場である」と強調。「とりわけ、日本全体の賃金を動かしていくには、雇用労働者の7割を占める中小企業で十分な賃上げができるかが鍵である」と述べた。
価格転嫁の推進に向けては、「政府の『労務費の転嫁のための価格交渉に関する指針』を企業の調達部門にも周知・浸透させ、価格転嫁・価格交渉・環境整備を適切に進めていく必要がある。指針の周知・相談活動は、労使一体となって取り組んでいくべきだ」との考えを表明。BtoCを含む価格転嫁については、「消費者のマインドも変革していかなければならない。安売りは、労働の価値を下げかねない。価値を認め合い、適正な価格を目指していくことが大事」と述べた。
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