よく耳にする自律神経とは、全身のほとんどの器官をコントロールしている司令官のような存在です。名前の通り、私たちの意思に関係なく自律的に働き、呼吸、血圧、心拍、体温、消化・吸収、代謝など、生命を維持するための活動をつかさどっています。
自律神経は、交感神経と副交感神経に分かれ、二つは相反する働きを必要に応じて自動的に切り替えながら調整し合っています。例えば、血圧を上げたり筋肉を緊張させるのは交感神経、血圧を下げたり筋肉を弛緩(しかん)させるのは副交感神経という具合です。時折、交感神経は悪い働きをしていて、副交感神経が優位の状態が良いと思っている人がいます。それは間違いで、二つがバランスよく機能していることで生命や健康は保たれているのです。
そのバランスが崩れると、心身に不調が現れます。動悸(どうき)、めまい、疲れ、頭痛、肩こりや腰痛、便秘や下痢、アレルギー症状や持病の悪化、風邪を引きやすくなるなど多岐にわたります。また、落ち込みやすい、イライラする、意欲が減退するなどの形で精神にマイナス作用の場合があります。
自律神経のバランスが崩れやすいのは、過労、睡眠不足、不規則な食生活、運動不足といった身体的なストレスのほか、人間関係や仕事のプレッシャー、悩みや不安など。また、季節の変わり目も要注意で、特に春先は気温や気圧が変動しやすく、日が長くなることによる活動時間の延長、年度末の決算、人事異動、子どもの卒業や入学、独立といった環境変化も要因となります。
自律神経の働きを良好に保つには、まず自分の心身にきちんと向き合うことが大切です。何となく調子が出ない、些細(ささい)なことがおっくうに感じる、食欲の変動など、いつもと違うと思ったら、それは自律神経からのサインかもしれません。こんなときはぬるめの湯にゆったりと漬かる、寝る前にパソコンやスマホは見ない、朝起きたら朝食を食べて活動のスイッチを入れる、気分が上がる服を着る、部屋やデスクの上を片付けるなど、生活の中でちょっとした気持ち良いことをしてみると、意外に効果を発揮します。
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