イスラエルのガンツ前国防相は、イスラム教の断食月(ラマダン)が始まる3月10日までにハマスがイスラエル人の人質全員を解放しなければ、エジプトとの国境のラファでの地上侵攻を開始すると表明している。しかし、この地域にはガザの人口220万人のうち150万人が避難してきており、多くの民間人が巻き添えになる恐れがある▼
昨年10月7日、イスラム組織ハマスの兵士約1000人がイスラエルに奇襲攻撃を仕掛け、約1000人のイスラエル人や外国人などを殺害し、さらに約240人の人質をガザに連行した。これに対し、イスラエルは自衛権の行使を旗印にガザに侵攻し、昨年10月以降のガザの死者数は3万人を超えた。しかも悲しいことにその7割は女性や子供たちである▼
一方で、イスラエルのネタニヤフ首相は脱税容疑で訴追されている。しかし、現在、非常事態が宣言されていることを理由に検察の追及を免れている。彼は戦争を続けている限り逮捕されないと考えている。また将来的にはハマスをせん滅し、ガザを実効支配できれば、その統治は経験のある地元の専門家に担わせ、イスラエルは治安の責任を負えばよいとしている▼
もし、ラファでのイスラエルの攻撃が始まれば多数の罪のない民間人の犠牲が発生するのは明々白々である。人間はなぜこうも残酷になれるのだろうか。このままではイスラエルとハマスの戦いが、憎悪に憎悪を呼び起こす悪循環に陥らないとも限らない。バイデン米政権は米国がイスラエルに供与している武器を使用する際、国際法を順守することを要求している。イスラエルの軍事侵攻を止められるのは米国しかないのは仕方がないことなのだろうか
(中山文麿・政治経済社会研究所代表)
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