建設業界の中でも中小規模の地域に根差した建設関連企業は、いわゆるゼネコン(大手総合建設会社)から専門業務を請け負うサブコンと呼ばれてきた。その中には専門分野に特化し、独立型としての立場を確立している企業がある。業績が伸びている建設関連企業の“今”に迫った。
環境に寄り添った早期のり面緑化で防災・減災やSDGsに貢献
植生シートや植生マットなどの製造・販売・施工を行っているロンタイ。長年、道路や河川などののり面緑化による保護に取り組み、その延べ面積は国内トップシェアを誇る。製品の高い品質と施工技術を生かして、防災や災害復旧に貢献するとともに、近年ではSDGsの取り組みにも力を注いでいる。
豊富な製品ラインアップと短納期で国内トップシェア
道路や河川などののり面は、通常、コンクリートや石材などの構造物、または植物などで保護されている。のり面は雨や風の被害を受けやすく、むき出しの状態だと土砂災害につながるリスクがあるためだ。ロンタイは、創業当初から植物によるのり面緑化に特化して事業を展開してきた専門会社だ。 「当社は、もともと鉄工所としてスタートしましたが、先代が高度経済成長期で道路などの公共工事が増えることを見越して緑化に着目し、ネットに肥料と種子を付着させた緑化製品を発売しました。その製造機械を自社で開発し、その後さまざまな状況を考慮した植生シートや植生マットをつくってきました」と同社取締役営業部長の小松純さんは発端を説明する。
同社製品の特徴は、生育の早い外来種子を用いることで植生を促し、のり面を迅速に保護できることだ。造成や災害などで一度緑が失われると、元の環境に戻すには長い年月を要する。その点、植生シートなどを用いれば、条件を満たせば1~2カ月程度で植生環境が整う。その後は周辺から飛んできたその土地の植物が根付いて外来植物と置き換わり、自然保護と災害対策の役割を果たす。 「当社は、早い段階から全国展開を目指して日本各地に工場をつくり、現在七つの製造拠点があります。防災や災害復旧に製品を使用する際、現場に最も近い工場からいち早く納品できることも当社の強みです」
SDGsの取り組み推進で新たな需要を掘り起こす
ニーズをつかんで順調に業績を伸ばしてきた同社は、3~4年前にリーマンショック以降で最高益を達成した。台風や豪雨による災害が続いて需要が急増したためだ。しかし、それ以降は受注量が落ち着いてきているという。 「近年、災害は増えていますが、従来工法での対応には限りがあります。新たな取り組みにより従来のものと差別化を図り、適材適所といえる提案を進めていきたい」と小松さんは表情を引き締める。
同社が新たに力を入れているのがSDGsの取り組みだ。社内で勉強会を立ち上げて、社員からも広くアイデアを募り、自分たちにできることを模索した。その結果、のり面緑化による生態系の創生や環境保全、防災や災害復旧などを通じた社会課題の解決を目指して、30年までに国内緑化総面積1億㎡達成という目標を掲げた。
その具体例として、23年にスタートした北海道厚真町森林再生プロジェクトがある。同地は、18年9月に発生した北海道胆振東部地震で被災して山が崩れ、裸地のまま風雨にさらされていた。自然による植生回復には相当な年月がかかると予想されるため、厚真町と協定を締結して、新たな工法による試験施工を行っている。 「これまでさまざまな公共事業を請け負ってきましたが、自治体と協定を結んだのは初めてです。今後、試験施工の成功を目指すとともに、自治体の限られた予算の中でどこまでできるのか。そうした新しいことにもどんどんチャレンジしていきたい」
また、近年の外来種ではなく国産の植物で緑化したいというニーズに対応するため、日本で栽培・採取された国内産種子による製品化にも乗り出している。種子そのものを栽培できる人が減少している中、同社は農家と提携し、耕作放棄地を活用した種子づくりを行っている。まだ収量は少ないが、今後面積を広げていくと同時に、地域の雇用創出につながればと期待を寄せている。
専門性の高さによる入社希望と業務効率化
近年、建設業界では人手不足が深刻さを増しており、特に新卒者がなかなか入ってこないことは業界全体の悩みともいえる。しかし同社の場合、専門性の高さ故に「この分野に精通したい」という意気込みで入社する新卒者が増えているそうだ。志望動機に同社のSDGsの取り組みを挙げる者も多く、手応えを感じているという。
また、ここ数年、業務の効率化にも取り組んできた。気象条件や現場によって就業時間の読みにくい施工技術者たちの残業を減らすため、全ての技術者にPCを携帯させて、事務所に戻らなくても現場と情報共有ができる仕組みを構築。無駄が減って労働時間の削減につながっている。 「この仕事は環境保全において高い必要性があるものと考えています。だからこそ、中長期的視点を持って事業展開していくことが重要だと思います。今後もSDGsの取り組みを進めて、地域の安心・安全に貢献していきたい」と小松さんは今後の展望を語った。
会社データ
社 名 : ロンタイ株式会社
所在地 : 大阪府守口市金田町3-1-11
電 話 : 06-6902-9401
代表者 : 中川太郎 代表取締役
従業員 : 130人
【守口門真商工会議所】
※月刊石垣2024年7月号に掲載された記事です。
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