地域の農畜産業を応援する こだわりのソフトクリームを開発
あだたらのちち株式会社 代表取締役 千葉 清美(ちば・きよみ)
美しい田園風景に引かれて 移住先で起業を決意
私は神奈川県横浜市で生まれ育ち、2005年に夫の転職で福島県に移住しました。いつかは横浜に戻るつもりでしたが、福島県の美しい田園風景とおいしい食べ物、人の温かさに感動し、引っ越してすぐに永住を決めました。
移住して6年がたち、11年に東日本大震災が発生しました。原発事故をきっかけに農畜産業が衰退し、私の大好きな美しい田園風景が失われていったのです。また、その翌年に大病をして奇跡的に命が助かった経験もターニングポイントとなりました。「私が住む安達太良(あだたら)地域の美しい田園風景を未来につなげたい」という思いが強くなり、地元産の生乳を使用してソフトクリームをつくろう!と決意しました。
食品に関連する経験も知識もないゼロからのスタートで、勉強しながら何度も試作を重ね、ソフトクリームを開発していきました。圧倒的においしいものであること、体に安心・安全であることを理念に6年かけて完成したのが、地元産の生乳を100%使用した「きよミルク®︎」という商品です。ついに念願かなって19年、会社を設立しました。「きよミルク®︎」を通して、若い世代に農畜産業に興味を持ってもらえたら、という一念で小さな自社工場で製造と対面販売をしています。
徐々に事業が軌道に乗り さらなる拡大も目指す
開業当初は認知度が低いため売り上げが伸びず、新規販路を求めて営業に行ってもなかなか契約に至りませんでした。大きな販売先からの突然の契約中止など、思いも寄らないことが次々と起きて何度も心が折れそうになりました。そんなときは家族、友人、お客さまに応援してもらったおかげで持ち直すことができました。ほぼ一人で会社を運営していますが、周りの人々に支えていただき、いくつものピンチを乗り越えることができたのです。ひたすらコツコツと製造と販売を繰り返し、イベント出店にも力を入れてきました。少しずつ上向きになってきた起業4年目、ネットニュースに取り上げていただいたことで対面販売時に行列ができるようになり、県外からのお客さまも増えてきました。
今では、製造が追い付かない状況になったので、広い場所に移転して製造工場を大きくし、カフェを運営したいと計画しています。お客さまが安達太良地域のおいしい空気と美しい景色を感じ、地元産のおいしいものを食べながらゆっくり過ごせる場所をつくりたいのです。そして、地元産の生乳を使用したチーズづくりにもチャレンジしたいと思います。最終目標は、この事業を若い世代の後継者に引き継ぎ、安達太良地域の農畜産業を未来につなぐプラットホームにすることです。まだまだ長い道のりかもしれません。
起業当初は気付いていませんでしたが、今この仕事は私の使命だと感じています。地元の酪農家の皆さん、お客さまの笑顔が私のモチベーションです。これからも残りの人生を懸けて、最善を尽くして頑張っていきます。
会社データ
社名 : あだたらのちち株式会社
所在地 : 福島県二本松市西町2-1
創業 : 二本松
事業概要 : 食料品製造業、卸売・小売・飲食業(ソフトクリームの製造・販売)
Facebookはこちら :https://www.facebook.com/KiyomiChiba.adataranochichi/
【二本松商工会議所】
※月刊石垣2024年8月号に掲載された記事です。
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