厚生労働省は9月6日、「令和6年版 労働経済の分析」(労働経済白書)を公表した。同白書は2部構成で、今回は「人手不足への対応」がテーマ。第Ⅰ部では2023年の雇用情勢や労働時間・賃金、経済などの動きや特徴をまとめ、企業の人手不足感はコロナ禍前より強まっていると分析した。また、第Ⅱ部では、人手不足の現状とその背景を過去の人手不足期間と比較しながら分析するとともに、人手不足への対応に向けた方向性などを示した。
23年の雇用情勢については、求人が底堅く推移する中、正規雇用労働者は女性を中心に9年連続で増加したほか、非正規雇用労働者も長期的に男女共に増加傾向にあること、転職の活発化が見られることなどを示した。賃金については、23年の民間主要企業の賃上げ率が3.60%と30年ぶりの高水準となり、現金給与総額は3年連続で増加したものの、実質賃金は物価上昇により21カ月連続で減少したこと、労働時間については働き方改革の進展で減少傾向にあることなどを示した。
一方、人手不足感は新型コロナウイルス感染症の拡大前よりも強まり、特に「宿泊・飲食サービス」「卸売・小売業」「医療・福祉」の分野で強くなっていると指摘した。その背景について、過去半世紀の間の人手不足期間(高度経済成長期末期の1970年代前半、およびバブル経済期の1980年代後半~90年代前半)と比較して考察。2010年代から現在に続く人手不足は、労働力需要の増加、労働時間の短縮、経済のサービス産業化の進展などが複合的に影響し、「短期かつ流動的」であった過去の人手不足局面に対し「長期かつ粘着的」であると分析している。
さらに、現在の人手不足局面は、広範な産業や職業において労働力需給ギャップ(労働力需要と労働力供給の差)が生じていること、中小企業から大企業への労働移動は生じているものの産業間・職種間の労働移動は活発化しておらず、労働市場のマッチング効率性も低下していることなどを指摘した。
このような状況に対応するためには、潜在的な労働力の労働参加、1人当たりの労働生産性の上昇が欠かせないことを指摘。誰もが参加しやすい労働市場の実現などを通じて総労働力供給を増やすこと、また、労働生産性の向上にはAI・ICTなどの技術の活用や、データ分析の活用による高付加価値の商品・サービスの提供を進めることの必要性を説いた。
「誰もが活躍できる社会」の実現に向けては、就業率は上昇したもののパートタイム比率が高い状況にある女性労働者や、国際的に見ても就業率が高い水準にある高齢者、増加傾向にある外国人などの多様な人材が活躍できる職場づくりが重要と提示した。具体的には、女性については出産・育児などによるキャリアの一時的な中断が女性の職業人生の選択肢を狭めないよう正規雇用として復帰できる環境や支援を充実、高齢者については年齢にかかわらず働ける職場環境整備、外国人については、賃金はもとより休日日数などを含めた総合的な処遇の向上が重要であると指摘している。
さらに、介護や小売・サービスなどの人手不足が深刻な分野においては、離職率を下げること、賃金水準をはじめ労働環境、労働条件の整備・改善、人手不足の程度に応じてICTの活用や機械化の対応が効果的であると指摘した。
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