Q 取締役会について、オンライン会議システムを用いて実施することはできるのでしょうか。実施することができる場合、注意するべき点などを教えてください。
A 取締役会をTeamsやZoomなどのオンライン会議システムを用いて実施することは、一定の要件の下に許容されると解されています。リモートワークの環境が整っていれば柔軟に取締役会を開催することができるという利便性もあり、コロナ禍を機に多くの会社において活用されていますが、良好な通信環境が確保されていることが必須となります。また、電子署名を行って作成した議事録を登記手続きに用いる際には、商業登記法上の観点などから一定の注意が必要です。
オンライン化される取締役会
取締役会は、各取締役が意見を表明し議論する会議体として設定されるため、リモートの場合、「各取締役の音声と画像が即時に他の取締役に伝わり、適時的確な意見表明が互いにできる仕組み」の確保が不可欠であるとされています。
良好な通信環境があれば、オンライン会議システムなどを用いた会議は、ほかの参加者の発言内容や表情を瞬時に読み取り、議論を行うことができるため、「適時的確な意見表明が互いにできる仕組み」であると考えられ、取締役会へのオンラインによるリモート参加は許容されるものと解されます。
開催に当たり注意するべき点
通信状態が悪化し、議論に参加できない状態になった場合、十全たる取締役会としての議事とは認められません。当該取締役会が原則無効になるという考え方、通信が途切れた取締役が議事に参加していないことになるという考え方などがありますが、その法的効果については最終的に事案判断となります。この点、決議の有効性を確保するためには、通信状況の悪化が認められた場合、これを放置することは避け、通信状態が回復し十全に議論を行える環境を確保してから議事を再開する必要があります。再度ログインを試みて通信状態を回復させる、また、複数のオンライン会議システムを使用できるよう準備しておくなど、いざという時の対応をあらかじめ検討しておくことが求められます。
また、取締役会議事録には取締役会の開催場所を記載する必要があり、開催場所を持たないオンラインのみの取締役会の開催の可否については消極に解されます。一方、取締役会の開催場所は会社内に限られるものでないため、例えば議長の所在地を開催場所とし、ほかの取締役をオンライン参加とすることで事実上可能となります。
招集手続きを進めるには
オンラインで実施する場合、招集通知に開催日時、場所のほか、オンラインでの出席が可能である旨、ログインするのに必要となるURL、IDおよびパスワードなどの情報を記載しなければなりません。オンラインでの取締役会に招集する期間の定めは対面における場合と同様、原則として取締役会を開く日の1週間前までに通知することが求められます。通知は任意の方法で構いません。
電磁的記録による議事録の作成
議事録は電磁的記録により作成することもでき、署名・記名捺印については電子署名をもって代えることとされています。電子署名として認められるには、「当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること」、「当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること」という二つの要件を満たす必要があると定めがあり、法務省からはリモート型またはクラウド型のいずれも有効とされています。ただし、電子署名はさまざまな事業者が提供していますが、当該議事録をオンライン登記手続きに用いる際には、商業登記法上、一定の要件を備えた電子署名であることが求められるため、事前に申請を行う司法書士などに適合性について確認を取る必要があります。
(弁護士・苧坂 昌宏)