Q 当社は飲食店ですが、昨今の人手不足の影響もあり、数時間単位で働いてもらえるアルバイト(スポットワーカー)の雇用を検討しています。スポットワーカーの活用について、注意点を教えてください。
A 法律上はスポットワーカーという雇用形態は特に定められていませんが、パートタイマーなどの短期雇用者の種類の一つであり、労働者に該当します。従って、通常の労働者に適用する法律や時間管理が求められます。複数の勤務先を掛け持ちしているケースが多いため、「業務中に知り得た機密情報を外部に漏らさないように、秘密保持契約を締結する」「同業他社での勤務が確認された場合は雇用しない」などのルールを決めておく必要があります。
スポットワーカーとは、一般的に、企業と短期的に雇用関係を持ち、一時的な仕事を行う労働者のことをいいます。通常、短期間または臨時的に雇用される労働者を指すため、契約社員・パートタイマーと比較しても雇用契約期間は短期間になることが多いようです。
企業にとっては、スポットワーカーを雇用することで、人手不足の際に迅速に対応できるため、柔軟に労働力の確保を行うことが可能です。また、必要な時だけ雇用することで、正社員のような固定費を抑えられる面でコストの効率化や、経済状況や事業状況が不安定な場合に雇用リスクを低減できるというメリットもあります。一方で、短期間の雇用が前提のため、定着率が低いことがデメリットとして挙げられます。また、スポットワーカーのスキルや経験が一定でないことにより業務の質が不安定になる可能性があり、訓練や教育にコストがかかるという面もあるのが特徴です。
雇用契約書を締結する前に
スポットワーカーであっても、使用者の指示命令を受けて労働を行うのであれば、労働者であることには変わりないため、労働基準法など各法律の適用を受けることになります。また、社会保険や労働保険についても、加入要件を満たした場合は加入が必要です。特に労災保険は、1時間単位・1日単位のアルバイト労働者も対象となるため、スポットワーカーも適用対象者となることに注意しましょう。
スポットワーカーを雇用する際は、正社員やパートタイマーの雇用時と同様に、雇用契約書の締結を行ってください。特に、スポットワーカーが一時的な雇用であることを明確にし、正社員やパートタイマーとの違いを明記することが重要です。その他の報酬額や支払い方法、支払い期日なども明確に雇用契約書に記載します。
労働時間と安全配慮の盲点
スポットワーカーは、自社以外にも勤務先を複数掛け持ちしていることが多くあり、長時間労働を行っているケースもあり得ます。労働者が複数の勤務先で労働を行った場合、労働時間が通算されるため、ほかの勤務先の労働時間を把握する必要があり、注意しなければなりません。通算された労働時間が1日8時間、1週40時間を超える場合、後から契約した勤務先が当該超えた時間に対する割増賃金を支払う必要があります。
また、スポットワーカーであっても、企業は労働者に対する安全配慮義務を負っているため、スポットワーカーのほかの勤務先、通算労働時間に加え、健康状態の確認も必要です。健康状態に問題がある場合は、雇用しないという選択も必要になってきます。
秘密保持契約で企業を守る
スポットワーカーは複数の勤務先を掛け持ちしているケースが多いことから、業務中に知り得た機密情報を外部に漏らさないようにするために、秘密保持契約を締結することが必要です。
特に同業他社において勤務している場合などは、無自覚に自社の営業秘密を漏えいさせるリスクもあるため、同業他社での勤務が確認された場合は雇用しないなどのルールをあらかじめ決めておく必要があります。
(社会保険労務士・吉川 直子)
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