和と華と蘭が複雑に入り混じる国際色豊かなラビリンス都市・長崎。1月下旬、全国商工会議所観光振興大会が同市で開催され参加した。春節行事、ランタンフェスティバルに合わせた開催で、まちは祭りの活気に満ちていた▼
「長崎遊学」をテーマとする今大会は、全国から1800人を超える参加者が集まり、「長崎アピール」の採択で全3日間の会期を終了した▼
テーマとなった「遊学」からは「グランドツアー」を連想する。17世紀初頭から19世紀初頭まで、英国の裕福な貴族の子弟が学業に伴って行った国外旅行のことである。当時の文化先進国、イタリアやフランスを目指した彼らは、家庭教師を帯同して1年かそれ以上の長期の旅に出かけた。あのトーマス・ホッブズやアダム・スミスも家庭教師として同行したといわれる。若者たちは近隣諸国の政治・文化・芸術・考古学などを貪欲に学んだが、歴史地域の見物や買い物にも精を出した▼
長崎は日本のグランドツアー発祥の地ともいえる。鎖国政策によりオランダ商館が出島に置かれて以来、蘭学の中心地となった。シーボルトが1823(文政6)年に来日し「鳴滝塾」が開かれてからは、さらに多くの人が集まった▼幕末の志士、坂本龍馬も国際的で自由な気風の長崎を「わしの理想じゃ」と呼び、日本初の貿易商社「亀山社中」を設立する。また、幕末、長崎海軍伝習所練習艦としてオランダより贈呈された「観光丸」は、「観国之光」(国の光を観る)の語源である▼
疲弊した観光地の再生を目的に始まった観光振興大会も今回で20年目。まさに、各地域の「光を観つけにいく」大会であり、これからのさらなる発展を期待したい
(観光未来プランナー・日本観光振興協会総合研究所顧問・丁野朗)
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