日本商工会議所は3月19日、第140回通常会員総会をハイブリッド形式で開催し、全国各地商工会議所から会頭・副会頭ら約1000人(オンライン含む)が出席した。総会の冒頭にあいさつした日商の小林健会頭は、「私たちは今、まさに歴史的な転換点に立っていると感じている」と指摘。国際情勢の不確実性が一段と高まり、各国の政策、地政学リスクなどが日本経済にも大きな影響を与えることが予想される中、「商工会議所と各企業は、確固たる座標軸を持ち、さまざまなシナリオを想定しながら、新しい時代を切り開いていくことが求められる」と主張した。
小林会頭はあいさつで、成長型経済への転換について、「企業の旺盛な設備投資を追い風に、絶好の機会を迎えている」と強調。潜在成長率の底上げに向け、「官民が連携して、設備投資の拡大、労働力の確保、イノベーションによる生産性向上に取り組む必要がある」と述べ、「今こそ、政府の施策と、民間の果敢な挑戦により、『成長型経済』への移行を確実なものにしていこう」と呼び掛けた。
中小企業の稼ぐ力の強化については、「中小企業が前向きかつ持続的な賃上げに転換するためには、価格転嫁の推進や付加価値向上への支援強化が不可欠」と指摘。価格転嫁の推進については、「パートナーシップ構築宣言への参加と、政府の価格転嫁指針の活用などにより、価格交渉・価格転嫁を一層進めることが不可欠」との考えを強調した。
地域経済の再活性化に向けては、「良質な雇用を創出する『稼ぐ力』の創出・育成により、地域の経済循環を拡大させることが不可欠」と指摘。インバウンド消費、農林水産物の輸出拡大など、地域の中核を担う産業群が力強い動きを見せていることに加え、新たな成長分野への進出や事業拡大に向け、地域への投資意欲が高まる中、「こうした取り組みを加速・深化させ、投資によって得られる経済効果を、幅広く地域全体に最大限、波及 させることが極めて重要」との認識を示した。
総会では、石破茂内閣総理大臣、武藤容治経済産業大臣がビデオメッセージであいさつした。石破首相は、「成長型経済の実現に向けた機運が高まり、官民の連携が実を結んできている。この勢いを幅広い中小企業・小規模事業者の賃上げにつなげていきたい」と強調。全ての自治体に対し重点支援地方交付金6千億円の活用を強く働き掛けるほか、「下請代金法」「下請振興法」改正法案の早期成立、省力化投資・デジタル投資のさらなる促進などに取り組み、「所得と経済全体の生産性向上を図っていけるよう、政府として最大限の努力を進めていく」との方針を示した。
武藤経産相は、「中小企業・小規模事業者の賃上げには、原資が確保できるようにする必要がある。その鍵となるのは、価格転嫁・取引適正化だ」と述べ、取り組みを強化していく考えを表明した。
総会議事では、「2025年度事業計画(案)」と「同収支予算(案)」などが異議なく承認された。