多くの中小企業にとって大きな悩みのタネとなっている人手不足。その一方で、こうした状況に手をこまねいているのではなく、DXや多様な人材活躍、選択と集中の徹底など独自の戦略を打ち出し、「少人数」を「強み」に変えている企業がある。成長を続ける企業の経営者たちの取り組みとその考え方に迫った。
多様な人材の育成とDXで 多品種小ロットの生産にシフト
精密プレス加工と金型製作を行う川田製作所は、近年まで売り上げの大半を1社に依存し、従業員の高齢化も進んでいた。同社は、新卒の採用、外国人や障害者の雇用など人材を多様化し、元システムエンジニアの二代目社長が主導してDXを推進するなど改革を図り、従業員の若返りと生産性の向上、新たな販路開拓に成功した。
従業員の高齢化が進み 多様な人材を戦力に
神奈川県小田原市にある川田製作所は、1969年に板金加工やプレス加工を行う町工場として創業し、73年に会社を設立した。長年培ってきた技術力があるが、近年まで取引先1社に売り上げの7割以上を依存していた。また、従業員の高齢化も進んでいた。 「私が入社した当時は、55歳以上の方が多く、10年後にはほとんどの方が定年を迎えるような状態でした」と言うのは、二代目社長の川田俊介さんである。川田さんは、大手電機メーカーでシステムエンジニア(SE)として勤務した後、2010年に家業である同社に入社した。次世代を担う人材の育成が喫緊の課題だった同社は、ハローワーク頼りだった採用活動を改めた。13年から、地元の子どもたちの職業体験や、近隣の技術系大学からのインターンシップを受け入れ、新卒採用に積極的に取り組んだ。また、14年からは地元在住の外国人や外国人技能実習生の雇用を推進した。 「アジアの国の人たちは、ハングリーさがあって元気なので、会社全体が活気づくのではないかと思いました」という川田さん。ベトナムからの技能実習生は、日本人ベテラン技術者が長年かけて習得してきた仕事を、わずか数カ月でマスターした。彼らは言葉の壁を越えて、同社の戦力として確実に成長している。 同社は、多様な人材が活躍できる職場環境を整備しており、障害者雇用も「義務ではなく戦力」と考えている。従業員が40人未満の会社であれば障害者雇用の義務はないが、同社では地元の施設との縁で、1975年頃から障害者を雇用している。現在も聴覚障害や知的障害、肢体不自由など、5人が同社の戦力となっている。 「彼らは障害者手帳を持っていますが、障害ではなくて、それぞれの特徴です。その特徴に対する配慮をしています」という川田さん。例えば、不良品数を数えるのが苦手な知的障害を持つ従業員のためにカウンター(数取器)を導入するなど、個々の特性に合わせた工夫をしている。