2018年の訪日外国人客数は3119万人。ついに3000万人の大台に達し、20年の4000万人目標も視野に入ってきた。リピーターの増加とともに、今後は、「インバウンド未開の地」であった地方部にも多くの外国人客が押し掛けることが予想される。だが、そこには大きな課題もある。その一つがローカル鉄道の現状である。
▼外国人個人客のほどんどは、地域鉄道などの公共交通機関を利用する。航空機や新幹線で長距離移動をした後は、それぞれの地方にある「交通毛細管」である地方鉄道が利用される。だが、その毛細管の状況は誠にお寒い。
▼過去5年間の外国人客の増加率を見ると、上位には香川県、佐賀県、青森県などの地方都市が並ぶ(観光庁調べ)。しかし、国土交通省によれば、地域鉄道事業者96社のうち経常収支黒字はわずか23社で、残りの73社は赤字にあえいでいる。その原因は多々あるが、地方部でのマイカー依存で、地元住民がローカル鉄道に乗らなくなったことが大きい。
▼昨年12月、観光庁内に、外国人旅行者の地方部における鉄道利用促進のための検討会が設置された。委員メンバーは海外のOTA(Online Travel Agent)やリアルエージェントの経営者などである。彼らの目から、地域鉄道の魅力と問題点をじかに指摘してもらい、今後の施策に反映するといった流れである。すでに地域鉄道の中で優れた取り組み企業のヒアリングや、海外のローカル鉄道の調査などを進めている。3月末には、いったん検討結果を整理し、重点施策の取りまとめを行なうとともに、次年度からの国際観光旅客税(出国税)による予算措置を講じる予定という。地味ながら重要な施策である。
(東洋大学大学院国際観光学部客員教授・丁野朗)
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