電気制御盤の製造と部品販売の二本柱で構成する三共電機は、現場課題を社内発のDXで解決し続けてきた。社員の幸せを軸に改革を進め、その成果は「DXセレクション2024」優良事例に現れている。次の一手は、制御盤製造の「デジタルツイン」の実現だ。町工場から生まれた取り組みは、働き方を変え社員の笑顔につながっている。
目標年収700万円!社員を幸せにするDX改革
三共電機は、制御盤設計・製作を主力とし、工作機械やシールドマシン、自動車生産設備から大学向け装置まで多業種にわたる一点物の受注生産を手掛けている。多様な顧客ニーズに応える「技術のハブ」としての存在が強みだ。全国でもまれな60人規模の「町工場」として成長を続けている。
しかし、大手企業に勤めていた現社長の三橋(みつはし)進さんが後継者として同社に入った2014年当時、現場は業務の属人化とアナログに依存した環境により、無用な忙しさに見舞われていた。そこで、三橋さんはDXを経営の最重要課題に据え、社員を幸せにしたいという思いから「年収700万円を目指す」という分かりやすい旗を掲げた。同時に、「自分たちの仕事が社会にどうつながるかを伝え、士気を高めるようにしました」。
DX推進は社長直轄とし、現場で使える仕組みを内製化するため、社長自ら「Microsoft Power Platform(Microsoft 365と連携するローコード開発ツール)」を活用したアプリ開発に取り組んだ。まず、部品管理の煩雑さを解消するため、約2000種類の雑材料の発注をQRコード で処理するアプリを開発。1週間かかっていた棚卸作業が半日で終わるようになった。勤怠管理などもアプリ化し、「現場からデジタル化を歓迎する声が出た瞬間に社内の変化が始まりました」と、三橋さんは当時の様子を語る。デジタル化は押し付けるものではなく、仕事が楽になることを示すことで進むのだ。
デジタル人材育成という課題に対しては、特定の社員に専門教育を施すのではなく、誰でも開発者になることを推奨した。もちろんサポートは行う。すると、アプリ開発とは無縁だった家政科卒の女性社員がローコードで日報アプリを開発し、業務改善の中心人物に成長していった。
近年はAIエージェントも積極的に開発・導入している。例えば、有給休暇に関する質問には、AIが就業規則を基に即答するという仕組みだ。
