現在、わが国の経済は、デフレからインフレへ変わりつつある。そうした経済環境の変化は、日々の暮らしに大きな影響をもたらす。それに合わせて、私たちも頭の切り替えが必要だ。
1990年代後半から、わが国は景気の低迷もあり物価下落(デフレ)が続いた。その後、2015年から21年まで、消費者物価はほぼ0%近傍で推移した。ところが、22年、物価は前年比2・5%に跳ね上がった。当面、わが国のインフレは続きそうだ。人々の心理も変わり、「これからも物価上昇が続くだろう」とのインフレマインドになりつつある。それに伴い、株式や不動産などの実物資産の価格は上がりやすくなる。
物価上昇の要因はいくつかある。まず、世界的なモノやサービスの価格上昇の影響だ。米国では、コロナ禍対策としての大規模な財政出動により、過剰貯蓄が出現した。それが消費や投資に回り、世界的に物価は上昇。それに伴い、米利上げの予測から日米の金利差は拡大し、外国為替市場で円が売られ円安が進行した。また、ウクライナ戦争や中東情勢緊迫化から、エネルギー資源や穀物の価格が上がった。タンカー輸送コストが増え、わが国では輸入品の価格が上昇した。
それに加え、人手不足により人件費が上昇した。日銀短観の雇用人員指標では、21年秋以降、人手不足が一段と深刻化している。人件費上昇は物価を押し上げることになる。さらに重要な点は、消費者の間でインフレマインドが醸成されたことだ。今年の新米の価格は高騰気味だが、それでも消費者の需要は旺盛だ。先々の値上がりを見込む消費者は増加しているようだ。
