ここへ来て、わが国の人口減少・少子高齢化の問題は一段と深刻さを増している。政府は、企業に70歳までの就業機会の確保を努力義務として課したが、人手不足は簡単に解消されないだろう。その解決策の一つとして、移民の受け入れは避けて通れない問題だ。同質性が高いわが国の社会特性を考えると、外国人受け入れ推進は口で言うほど容易ではない。一方、人口問題により、外国人の力を借りずに経済・社会を円滑に運営することも難しくなっている。
移民先進国といわれる米国は、建国当時からさまざまなバックグラウンド、価値観を持つ人を受け入れ、成功のチャンスを与えた。第2次世界大戦後のドイツ、スウェーデンなども、いろいろな問題に直面しながら外国人と自国民の統合に取り組んだ。そうした前例を参考にして、わが国でも移民の問題を真剣に議論すべき時が来ている。
現在、主要先進国の移民・外国人労働者に関する政策は、大きな転換点を迎えている。多くの先進国で、自国民の雇用・所得機会の確保、社会保障を優先すべきとの論調は目立つ。ただ、わが国では、国の想定を上回るペースで外国人労働者が増えている。それだけ労働力不足が深刻ということだろう。法務省によると、2024年末の在留外国人数は376万人、23年末比で35万人増加した。24年末、高度外国人材(専門的な知識や技術を持つ外国人)の認定件数は5万5688件、19年末の2・6倍だ。
今後、外国人受け入れの重要性は高まるとみられる。国立社会保障・人口問題研究所が公表した「日本の将来推計人口」によると、2070年のわが国の人口は現在より30%程度減少し8700万人になる。うち外国人は939万人、人口に占める割合は10・8%に上昇する。そうした変化に対応するため、政府もようやく新たな制度を導入した。これまでの外国人労働者の受け入れは、1993年開始の技能実習制度に準拠した。本制度は原則、転職を認めていない。それに対して、2027年4月1日から、政府は育成就労制度を施行する。基本的には3年間働いた後、技能水準が高い別の在留資格(特定技能)に移行でき、転職も認める。
人種のるつぼといわれ、移民を受け入れることで経済成長を実現してきた米国では、トランプ政権が移民政策を厳格化した。すでに企業の採用、個人消費に悪影響が出ている。欧州では、移民・難民受け入れで人口規模を維持してきたフランス、ドイツ、スウェーデンが政策を修正した。オーストラリアも、留学生の受け入れ上限を設定し移民を抑制し始めた。ドイツなどの移民政策の転換は、移民や難民に寛容な政策の揺り戻しといえる。スウェーデンは一時、世界で最も移民に寛容といわれるほど、外国人の受け入れを重視した。しかし、第1次オイルショック後は就業目的の移民は抑制し、難民を受け入れる方針に転換した。1980年、スウェーデン政府は外国人法を改正し、入国前の居住許可取得を義務付けた。89年には難民を庇護する基準を明確化し、居住や労働許可の審査規定も国が整備した。その後、自国民との融和の難しさが徐々に表面化した。2024年にスウェーデン政府は、約500万円を支払う代わりに社会になじめなかった外国人に帰国を求めた。
わが国は、海外の移民政策から学ぶことが多いはずだ。外国人労働力は人手不足の解消に有効だが、受け入れにはそれなりの準備が必要である。初期段階から、言語、社会規範、そして法令順守に関する教育を徹底し、自国民と公正・公平に扱うことは重要だ。一方、移民がわが国のルールを守れないなら、厳正に対処することも必要だろう。
わが国は、現実的な移民受け入れの体制を議論すべきだ。海に囲まれ、同質性が高い社会のわが国で、議論が難しいことは言うまでもない。外国人をどのように受け入れ、社会と経済の活力向上につなげるか。問題を先送りすれば、その対応は一段と難しくなる。移民問題の議論は待ったなしだ。 (10月12日執筆)

