日本最北の地、北海道稚内市。このまちも、人口減少と若者の流出という深刻な地域課題に直面している。稚内商工会議所青年部(以下、稚内YEG)では、未来を担う地元の中学生に焦点を当てた独自のキャリア教育事業「わかる!働く!未来へつなぐジョブフェア」を展開。この取り組みは、単なる職業体験にとどまらず、早い段階から地元産業への関心を引き出すのが狙いだ。将来的に地元就職やUターンを促進することで、地域の永続的な繁栄を目指す。
官民連携で中学1年生に「仕事」の価値を伝える
稚内市ではこれまで、中学2、3年生や高校生に向けた就職活動支援やインターンシップ、または小学生向けの職業体験の機会を提供してきた。しかし、中学1年生に対しては、「仕事」や「地元企業」に対する意識付けを行うための企画が手薄であった。稚内YEGは、以前から人口流出により地域の過疎化が進む現状に対して強い危機感を抱いており、より早い時期からのキャリア教育が必要ではないかと感じていた。
この課題意識は稚内市や稚内市教育委員会にも共有され、稚内YEGの今までにない中学1年生を対象にした発想に、行政も全面的に賛同。そこで、2018年に「わかる!働く!未来へつなぐジョブフェア」を開催した。知っているようで知らない仕事を紹介する“中学生向けの地元企業PRフェア”が始動した。
「この事業の特筆すべき点は、稚内市、稚内市教育委員会との官民連携事業として始動したことです。稚内市中小企業振興基本条例の理念に基づき、企業、経済団体、金融、学校、行政が連携する『オール稚内』の強固な連携こそが、事業の継続性と、後に結果を生む最大の要因だと思います」と稚内YEG会長の中山亮さんは語る。
地元企業と未来の担い手が交流する場所
ジョブフェアの取り組みは年を追うごとに拡大していき、25年度は、11月7日に稚内市総合体育館で開催され、市内6校から約230人もの中学1年生が参加した。開会式には稚内市の工藤広市長から、『このまちでは、多くの企業がさまざまな分野で地域の身近な暮らしを支えています。担当者から直接話を聞いて、将来は稚内で働くこと、また稚内でできることに目を向けて、まちを元気にする一役買ってくれることを期待しています』とのメッセージが、生徒たちに伝えられた。
当日は建設、電気、土木、漁業・水産加工、運輸、医療・福祉、小売り、サービス、そして陸海空自衛隊などの官公庁まで、稚内市の主要な産業を担う多岐にわたる45企業・団体が参加した。
「企業は、仕事の魅力を伝えるだけでなく、『なぜ稚内で働くのか』『この仕事が地域社会にどう貢献しているのか』といった、より本質的なメッセージを伝えることに重点を置いています」と、24・25年度稚内YEG会長の中山亮さんは話す。
例えば、漁業関係のブースでは、水揚げされた魚介類がどのように加工・流通されるのかということに触れ、地域の基幹産業としての役割を担っていることを説明。また、鉄道業のブースでは、出改札や運転の業務だけでなく、車両や線路のメンテナンスといった裏方の仕事も紹介し、安全な運行が地域生活を支えていることを伝えた。
「参加した生徒たちは、会場内に設けられた企業のブースを巡って熱心にメモを取ったり、積極的に質問を投げかけたりしていました。この経験は、地元企業の多様な職業を理解し、自分たちのまちの産業がどのように成り立っているかを学ぶいい機会になったと思います」と振り返る稚内YEGのメンバーは、生徒たちにとって発見の場になっていることを実感している。
