日本商工会議所の小林健会頭は4月2日、定例記者会見に臨み、春季労使交渉の回答状況や、緊迫化する中東情勢を受けた日本経済への影響について見解を述べた。連合による2026年春季労使交渉第2回集計において、従業員300人未満の中小組合の賃上げ率が5%を上回ったことに対し、中小企業経営者の「労使ともに頑張った数字」であると評価した一方で、組合のない多くの中小企業では人手不足に伴う防衛的賃上げが限界に近い点を指摘した。さらに、足元で進む急激な円安と、原油やナフサ価格の高騰が重なり、中小企業は非常に苦しい局面に立たされていると危機感を示し、政府に対し万全の対応を求めた。
小林会頭は、春季労使交渉について「労働分配率を上げてでも賃上げを断行せざるを得ず、現在の水準は十分な原資があり実施されたものではない。人材を引き留めるための『努力の結晶』である」と強調し、楽観できない深刻な実態を訴えた。
中東情勢については、原油価格の上昇によりナフサ由来の製品を含めた石油加工製品はすでに値上がりをしていることを踏まえ、「価格転嫁には約6カ月の時間差が生じるため、その間をどのように耐えるか、どの程度を価格転嫁できるかが問題である」と指摘した。サプライチェーンの最下流に位置する中小企業は、自力での調達は不可能なため、「極めて受け身な立場にある」とし、原材料価格の過度な上昇を防ぐ対応の実施を政府に求めた。併せて、BtoC業界は過当競争で価格転嫁が容易ではなく、「非常に苦しい局面にある」と懸念を示した。
エネルギー問題では、ホルムズ海峡の状況が見通せないことから、かつてのオイルショック時のように「国民に節約をお願いする局面が来ると思う」と危惧した。調達・供給可能な分量に合わせ、国民に対して前倒しで警告を出す必要性を示唆し、事態が深刻化した場合は、政府から協力要請があれば経済界として協力する姿勢を示した。
金融政策については、3月公表LOBO調査において、「金利上昇」よりも「円安の進行」の方が経営への影響が大きいとされた結果を踏まえ、1ドル=160円に近い為替水準は「フォース・マジュール(不可抗力)とも言える状況。インフレをスタグフレーションに陥らせてはならない」と述べ、日本銀行に知恵を絞ったかじ取りを要請した。
労働時間制度見直しについては、厚生労働省が実施した企業ヒアリング調査において、労働者の労働時間を「増やしたい」と回答した企業は16%だった一方、東京商工会議所が2025年12月に公表した調査結果では時間外労働の上限規制に関して、宿泊・飲食業と運輸業では5割超、建設業では4割超が「事業運営に支障がある」と回答した点に言及。業種ごとに影響が異なることから、「変形労働時間制」の柔軟な運用を政府に求めるとともに、中小企業の長所であるフレキシブルさを生かした人手不足緩和に期待を寄せた。
