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身の丈ITで生き残れ! vol.8

社名のEiGrain(アイグラン)はEi(ドイツ語でたまご)とGrain(フランス語で穀物)を組み合わせた造語。岩田利夫社長の「体に優しくておいしいパンをつくろう」という思いが込められている

東京都八王子市の有限会社アイグランは「安全・安心・健康」をモットーにしたパンの製造販売を行っている。地元のシステム開発会社に依頼して労務管理を中心としたIT化を試みたが、うまくいかずいったん撤退。長年付き合いがあるIT製品販売会社に相談して再度挑戦、成功させた。

IT補助金を活用してクラウド会計を導入

中小企業の場合、社内にIT関連システムに精通した人材がいないケースの方が多いだろう。有限会社アイグランも同じだった。社長の岩田利夫さんは「事務仕事に大きな労力を使っていたのでまず労務管理、できれば受注・製造・在庫管理なども一貫して管理できるシステムが欲しい」と思い、地元のシステム開発会社に依頼した。

「いとも簡単に『できますよ』という返事だったし、当社もITに関する理解が浅く丸投げをしたせいできちんと稼働するものが完成せず、失敗してしまいました」

しかし、IT化を諦めるわけにはいかない。同社は工場の生産ライン、販売店舗、本社の事務部門に人員が配置されていて、正社員、パートを含めて60人がシフトを組んで働いている。

「それぞれの担当業務や工場の稼働状況、勤務条件などに合わせていろいろな働き方をしています。製造ラインの稼働に凸凹があるので、急な残業をお願いすることもあります。それをタイムカードなどの紙ベースで管理し、事務部門がエクセル(表計算ソフト)に手入力して勤怠の管理や給料の額を計算していたので、大変な時間と手間がかかっていました。そこでまず、労務管理のIT化から手を付けることにしました」

岩田さんは相談相手として、30年近い付き合いのあるIT製品販売会社の営業担当者を選んだ。信頼関係が構築されており、経営課題を共有しているからだ。

同担当者は、2016年度のIT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業)を利用して、「PCAクラウド」を導入してはどうかと提案した。「PCAクラウド」は、会計ソフトや人事・給与・勤怠管理ソフトなど多様なソフトを組み合わせてクラウドで利用するサービスだ。ソフトやデータベースは、PCA側のデータセンターで管理されており自社サーバーは不要、社内のパソコンには「PCAクラウド」を利用するための専用ソフトをインストールするだけでいい。

また、同担当者から導入をサポートする会社として、ソフトウエア開発などを手がけるホクリンを紹介された。費用は導入サポート費用を含めて約180万円だった。

「当社の従業員の働き方や給与体系に合うようカスタマイズしてもらったこともあり、導入までに1カ月ほどかかりました。カスタマイズした分、多機能かつ操作が複雑になり、事務部門が操作方法を覚えるのが大変で、いまでも時々、戸惑うことがあるようです」

とはいえ、導入効果は大きかった。例えば、勤怠管理は紙から非接触式のIDカードに変わり、そのデータがPCAクラウドに取り込まれ、自動的に給与計算に反映されるようになった。おかげで毎月の給与計算や就業管理事務が7人日(にんにち=1人日は1人が1日8時間かけてこなせる作業量)から3人日に削減された。現在は、給与・勤怠管理と給与振り込みなどに使うインターネットバンキングとの連携まで進み、「画面に表示されるデータが正しいかどうかをチェックするだけでよくなりました」。

その代わり、インターネットバンキングとの連携では、着金日の3営業日前までに送金データを送らなければならないという制約が生じてしまった(手入力なら当日でもいい)が、こちらは金融機関側の事情が絡んでいるので簡単には解決できそうにない。

事務部門の経験を生かして製造部門のIT化に挑む

岩田さんの次の目標は、生産工程の管理だ。パンの生産には生地の仕込み→分割・丸め→成形→発酵→焼成→出荷という工程があるが、少量多品目の商品を1ラインで生産するため、「工程表の作成が難物」と岩田さんは言う。

「ベテラン社員が経験を基に手作業で作成している工程表づくりをIT化したい。同時に生産量にムラが出ないよう製造ラインの平準化にも取り組んで、従業員が働きやすい環境を整えていきたい」

大手には仕入れコストや生産性では勝てないが、安全な素材を厳選する、季節を感じる商品を提供するというような、ひと手間もふた手間もかけたおいしいパンを製造することはできる。岩田さんは、その強みを強化するためのツールとしてIT化を進めている。

会社データ

社名:有限会社アイグラン

所在地:東京都八王子市高倉町21-8

電話:042-643-3888

代表者:岩田利夫 代表 

従業員:60人

HP:https://www.eigrain.co.jp/

※月刊石垣2019年12月号に掲載された記事です。

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